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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -
幕間の物語 I
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想っているのは確かだ。」

 慈愛に満ちた表情で過去を回顧し、スカサハは本心を言葉にする。正に彼女らしい堂々とした物言いであった。

 固唾を飲み耳を傾けるジャンヌたち。


「──嬉しかったよ。世界が終わるその時まで一人だと覚悟していたからな。」

「──影の国から旅立つこともあったがウィスは必ず私のもとへ帰ってきた。それだけでどれだけ私が救われたか、ウィスは自覚していないだろう。」

「──自分の元に帰ってきてくれる人がいる。」

「──自分を余すことなく受け入れてくれる人がいる。」

「──私と同じ時間を共有してくれる。共に傍にいてくれる。」

「──ウィスと出会ってからこれまでの空虚な私の人生が色着き、輝かしいものになったのは間違いない。」

「──私自身束縛が強く、面倒な女であることは自覚している。だがそれでもウィスは私を受け入れてくれた。」

「いや、強いってレベルじゃないだろ。」

 そこに空気を読まずに横槍を入れる男が。槍ニキだけに。








───槍ニキがご臨終を迎えました───








「まあ、詰まり何が言いたいのかと言うとウィスと付き合いが最も長いのは私と言うことだ。」

 勝ち誇るような表情をジャンヌたちに向けるスカサハ。

「お前たちがウィスに好意を向けるのは勝手だが私があいつの一番ということに変わりはない。」

 スカサハは自信に溢れた声で彼女たちへ宣戦布告を行った。

 








 一方件のウィスは───

「わわっ!凄いです!トナカイさん!」

 ウィスの背中で嬉し気に無邪気にはしゃぐはジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ。彼女はジャンヌ・ダルクのオルタ面であるジャンヌ・ダルク・オルタから生まれた存在である。

 ジャンヌ・ダルク・オルタは正史にて本来存在しない英霊だ。だがどういうわけかウィスのことは覚えていた。いや魂そのものに刻み込まれていたのだ───。

 彼女は祖国と神を激しく憎悪したジル・ド・レェの願いによって現界した英霊。それは間違いない。だが過去にウィスが起こしたジャンヌを陥れた奴らを粛清したあの事件(・・)の存在も大きく彼女たちに関わっているのだろう。

 無意識にこの幼き少女もウィスのことを求めているのかもしれない。

「高いだろー?まだまだ高く飛べるぞ、リリィ?」

 微笑まし気に彼女をウィスは愛しむ。


 悔いのないように。


 彼ら、彼女たちが後悔を残さないように。


 自分は彼らの如何なる求めにも応えよう。


 自分に残された時間はもう残り僅か(・・)なのだ───









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