暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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だが、何かがおかしい。
いつもはよく分からない夢を見、しかもその内容がすぐにすくった水のように消えていくため、理由のないもやもやが残ることが常だった。
だが今は違う。相も変わらず寝ていた間に見ていた夢はさっぱり覚えていないのだが、妙な高揚感がある。起きた直後だというのに、引きずるような倦怠感がないのはそのせいだろう。
まるでずっと洞窟型のダンジョンに潜っていて、十数時間ぶりに日の光を見たような、そんな爽快感さえ伴う不可思議な快感。経験値稼ぎと頭では分かっていても、単調な作業に飽きていた頃にふと違うものを見た時のような、ささやかな意外感。
ピピッ、と小さな電子音が、車椅子と直結するために嵌めた首の操作部品から聞こえたような気がしたがよく分からない。チョーカー型のそれも含め、車椅子本体は運動力学も考慮した最新型だ。これまで気になるような音はしなかったのだが、システム面で何かあったのだろうか。
だが、首を傾げてカバーを撫でるが詳細など分かるはずもない。基本蓮は、プログラミングは使う側であり創ったり弄ったりするほうではないのである。
『次、189番。小日向蓮さん、3番診察室へ入ってください』
「おっと……」
クリアな放送音声に従い、リノリウムの床を車椅子が滑っていく。
埼玉県所沢市――――その郊外に建つ最新鋭の総合病院。SAO事件の最中、ずっと蓮が入院していた病院だ。
正直、ひどく無機質な病院独特の空気は好きではない。現実にいながら、常に死の匂いが色濃く匂うこの場所は、まるであの鋼鉄の魔城に連れ戻されたようで混乱してしまう。
―――いや、それもたぶん違う。僕が病院が嫌いなのはきっと……。
一瞬だけ、眠っているようにしか見えない一人の少女の死に顔が想起され、そして張り裂けるような彼女の声が――――
「…………っ」
軽く頭を振り、痛切な思い出を振り払う。
その間にも、無意識下で命を下していた車椅子は通路を器用にすり抜け、目的の部屋の前まで来た。一か月ごとに必ず来るここも、もう今となっては勝手知っている。少しだけ前身を倒し、薄いグリーンに塗装された扉を素早くノックした。
中の応答をロクに聞く間もなく、取っ手に触れる。
軽い電子音とともにスライドする向こう側にいた恰幅のいい中年の医者は、軽く額を掻きながら出迎えた。まるっきり人を出迎える態度ではないが、その理由というかそもそもの元凶である身としては何も文句は言えない。溜め息をつかれないだけでマシだろう。
回転椅子の上でくるくる回っている医者は、自分がカエルに似ていることを自覚しているのか、胸元のIDカードには小さなアマガエルのシールが貼り付けてあった。
「来たね、問題児?」
カエル顔の医者はこちらをチラリ
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