暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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深海のような不気味さが同居しているような、あの月のない夜の色を宿した瞳を思い起こし、知らず二の腕をさする。
そして、その恐怖ゆえに、あの少年の最後の言葉を思い出す。
―――私とあれが同じ、か。さて、的を射ているか否か極めて複雑なところだが、たぶん、ある意味でそれは合っていて、そして絶対に何割かは違っているのだろうな。
あの世界を――――加速世界を愛しているか。
レンホウというあの闖入者が放ったその言葉に応えるなら、そんなどっちかつかずとも取れる答えだろう。
確かにあの世界は好きだ。あの世界がなければ、今の自分は存在していない。自分を信じ、ついてきてくれるレギオンの皆と触れ合うこともなかっただろう。
だが――――
己の底。初代《赤の王》レッド・ライダーを討った頃から背負う十字架と、それに付随して蔓延る粘度の高い憎悪の感情もまた、あの世界を知らなかったら存在しなかったのも事実だ。
あの極悪の白にいつか相対し、その首を刎ねた先、自分はどうなるのかは分からない。
でも絶対に、その行為の代償でまた、何かが歪むのだろう。
それがどれだけ大切なものかは関係ない。けれどきっと、歪みは歪みしか生み出さないのだから。
「先輩」
「……ン?」
ぼんやりと思索の海に眼を泳がせていた黒雪姫は、ハルユキの呼びかけで視線を戻した。
そして、冷たくなりかけていた心を、彼は、
「え、と……それでも今回、先輩と赤の王が勝てたように、絶対に負けない人なんていないと思います。失敗から学ぶってよく言いますけど、勝ってもそれだけ悔しがる先輩なら、次は絶対勝てますよ!」
必死だった。
赤い顔を隠さずに、カップを包む黒雪姫の両手をさらに抱え込むように握ったハルユキは、一息に言った。
一瞬驚いたが、その内容は彼の行動ではなく、その言葉の内容だった。
―――くやし、がっているのか?私は。
違う。悔しがってなんかいない。なすすべもなく振り回されて、遊ばれて、ふてくされているだけだ。
だけど。
―――ああ、そうか。君は、そうだったな。足掻いて、藻掻いて、王の私でさえ圧されるような《災禍》に打ち勝ったんだったな。
連綿と続いてきた歪みの極致。
あの《鎧》の負の連鎖さえ断ち切った君ならば、君とならば――――
「……そうだな」
ぽつりと、華の花弁が舞い落ちるような呟きを落とした後。
黒雪姫は、手から伝わる暖かい熱につられるように、睡蓮の蕾がほころびるような笑みをいっぱいに浮かべた。
唐突に、目が覚めた。
無機質なLEDライトに照らされた蓮は、それだけでついウトウトしていたことに気付いた。
―――……?
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