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【アンコもどき小説】やる夫は叢雲と共に過剰戦力で宇宙戦艦ヤマトの旅路を支援するようです
閑話 ワールドイズマイン
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ねぇ。
 あのガードの硬い彼らは君でも一筋縄ではいかない相手だよ」

 なんのことはない。
 真田が気づいた漂流者艦隊の中枢近くに地球人が居る事に、ゴップ提督も感づいていたのである。
 ただ、真田達が叢雲を知っていたから真実に行き着いたのと違って、ゴップ提督の持っていた手札はおぞましいものばかりだった。
 ムラクモ重工が得意としていたロボット・ドロイドの製造過程の類似性と、当時の火星自治政府のアンダーグラウンドオペレーションに使われていた強化人間のDNAデータ、そして叢雲を中心とした不可思議な金の流れである。

「歴史の話をしよう。
 中央というのはどうしても地方を搾取する。
 その代わりに、中央は新たな新世界を見つけ、地方の下にその新世界をつけるのだ。
 あの時の火星は、その新世界だった。
 不満は爆発して戦争という事も国連内部では危惧していたのだよ。
 でもそうはならなかった」

「それはムラクモ重工のおかげ。
 資源確保のための木星開発の前線基地になる火星での火種は起こしてはならなかった。
 少なくとも『ウェンズデイ機関』と『ストラグル』はその為に変えられた。
 お姉さまの手によって」

 打てば響く彼女の言葉にゴップ提督は楽しそうに笑う。
 彼の戦場は言葉が武器だ。
 そんな彼と戦火を交える培養槽の彼女との会話が楽しいからにほかならない。

「そう。
 彼女は地球と火星の戦争回避という手段に、非合法テロ組織という生贄を用意した訳だ。
 火星の住民の怨嗟はこのテロ組織に向かい、火星自治政府が望んだ反地球への怨嗟は広がらなかった。
 テロも小規模で人死を出さない綺麗なものだ。
 彼らのテロが汚くなったのは、彼女が居なくなってからの事だ。
 そしてそれが、私がここに居る理由でもある」

 火星の反地球感情を吸収してくれる『ストラグル』は地球側にとってもありがたい存在だった。
 裏から地球側は叢雲を通じて支援すらしていたのである。
 それは、『ストラグル』が手の内を晒し続けた事を意味する。
 『ストラグル』のテロが大規模に、人死を出す汚いものになった時、今回の取締が成功した原因の一つである。

「ねぇ。おじさま。
 わたし、お姉様に会ってみたいわ」

 ゴップ提督はしばらく何も答えずに、ただムラクモ・ミレニアムの重役を見つめる。
 観念したように重役が首を縦に振ったのを見て、淡々とした声を出した。

「大人の話だけどね。
 ここには何もない。そういう事になってるんだ。
 という訳で、私と一緒に来るかい?」

 培養槽の少女は笑みを浮かべる。
 それは肯定の証。 

「ねぇ。おじさま。
 良かったら私に名前をつけてくださる?」

 しばらく考えたゴップ提督は
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