仮面ライダーブラーボ/仮面ライダーグリドン
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廃墟のように閑散とした野原。都市開発が進むこの地域でそこだけ忘れ去られたか、もしくはタイムスリップでもしたかのような、そんな雰囲気を感じさせる場所だった。気持ちのいい風が木々を揺らし、草花も文明のゴミに遮られることなく陽の光を浴びる。
……そんな自然が繁茂する野原の片隅に、不似合い極まりない物が二つ。
一つは大地に刺さった簡素な十字架。花が添えられているところを見るに、どうやら墓であることは分かるが……現代にはまるで似合わない、無縁仏をそのまま埋めたような簡素な代物だった。
二つ目は野原に佇んでいる一人の人物。彼――いや、彼女というべきか――の名は、凰蓮・ピエール・アルフォンゾ。この沢芽市で一番の人気を誇る洋菓子店、《シャルモン》のパティシエと店長を勤めている、という人物でありながら、無駄のなく引き締まった筋肉を持った戦士、という印象を抱かせる。それもその筈だ、彼は元々戦士だったのだから。
そんな彼がこの無縁仏の墓の前に立っている理由は、数日前に起きたある理由に遡る――
「さあ、今日も始めますわよ!」
シャルモンの一日は店長のその一言で始まる。パティシエ志望の店員たち――何故かイケメン揃い――が復唱し、少し遅い時刻に店舗は開店する。1ヶ月待ちともされる完全予約制のソレは、いつでも『本物』を提供することをモットーとしている。
「こら坊や! サボらないの!」
「うぇっ! すいません!」
客入りも多くなってきた午後、凰蓮はバレないように上手くサボろうとしていた店員の一人、城乃内秀保を怒鳴りつける。城乃内は怒鳴られた途端に背筋をピッタリ伸ばすと、凰蓮が作ったデザートを客に給仕する作業へと戻る。
「まったく……」
転がり込んできてからあまり変わらない城乃内にため息をつきながら、凰蓮は新たな商品の制作に取りかかる。ここ、沢芽市の一等地に設えられたシャルモンの日常は、このように過ぎていく。
――だがこの沢芽市は、日常を安心して過ごせる環境にはなかった。
「――――!」
新作のケーキの制作に取りかかろうとしたその時、凰蓮の戦士としての勘が何かを訴える。クリームが入ったボールを近くの店員に渡しながら、突如として凰蓮は入口まで走りだす。
その入口には、今まさに帰ろうとしている客がおり、その扉を開けると――
「ひっ……キャァァァ!」
――そこには《インベス》の姿があった。今、この沢芽市を最も危険たらしめている怪生物。一般市民に対抗できるものではなく、客を襲おうとその獰猛な爪を振りかぶり……
「ふっ!」
お客様に当てないように調整された凰蓮の跳び蹴りがインベスに炸裂し、インベスは店外へと吹き飛ばされる。お客様に非礼をわびながら店内に避難させ、凰蓮
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