194部分:第十五話 婚礼その三
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第十五話 婚礼その三
「三人で」
「そうするか」
「いえ、ここは」
義愛は頷いたが義智はこう言うのだった。
「三人だけではなくです」
「三人だけではなくというと」
「一体?」
「四人ではどうでしょうか」
微笑んでだ。こう兄弟に提案してきたのである。
「あの娘も入れて」
「義美もか」
「あの娘も」
「はい、今この屋敷にいますね」
その所在も尋ねるのだった。
「ですから」
「いや、残念だが」
すぐにだった。義愛が次弟に答えた。
「あの娘は今家にはいない」
「そうなのですか」
「父上と母上のお供でだ」
「外に出ていますか」
「そうだ。いつも通りな」
三人の妹である義美は両親、即ち八条家の総帥である二人の秘書の様なことをしているのだ。だからその行動を共にしているのだ。
それで今はいないというのだ。それを聞いてだ。
義智は残念な顔になってだ。それで言うのだった。
「なら。仕方ないですね」
「三人で飲むか」
「そうしましょう」
こう兄にも答えるのだった。
「それなら」
「そうしましょう。ではです」
「ワインを飲みましょうか」
義正が答えてだ。そのうえでだ。
三人はワインを飲んだ。その甲州ワインをだ。その味は。
「いいものだな」
「はい」
義智は兄の言葉に満足している顔で答える。テーブルの上にはそのボトルがある。三人のそれぞれの手にはグラス、そしてその中のワインを飲んでいるのだ。
それを飲みながらだ。義正も言う。
「日本のワインもです」
「欧州のワインの様にか」
「美味いのだな」
「何もかも欧州が第一かというとそうでもないでしょう」
義正はその欧州崇拝も否定していた。
「こうして日本のものもです」
「充分にいい」
「そういうものだな」
「仏蘭西では料理もワインも何かと評価をつけるそうです」
所謂星だ。その話も出すのだった。
「しかしそれは権威でありです」
「本当の味やよさがわかっているかどうか」
「それとは別か」
「音楽や文学も同じです」
そうしたものもだ。同じだというのだ。
「何でも欧州が第一とは限らないでしょう」
「欧州が欧州の基準で決めているならだ」
義愛もわかっていた。そうした権威付けは欧州基準で行われていることにだ。
「どうしても欧州が第一になるな」
「はい、主観によってです」
「権威は主観によって決められるか」
「ですから案外あてにならないものです」
「ではこのワインも」
「欧州から見れば取るに足らないワインでしょう」
彼等の基準、即ち欧州の主観から見ればそうだというのだ。
しかしそれに対してだと。義正はあえて言うのだった。
「しかし。こうして飲むとです」
「欧州のそれにもな」
「決し
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ