191部分:第十四話 忍び寄るもの十七
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第十四話 忍び寄るもの十七
「そこに二人でとなると」
「その。二人での幸せを手放さない為には」
その為には。婆やは自分の人生経験から話していく。婆やは今これまでそれなりに長く生きてきたことを感謝した。真理に話せるからだ。
「その為にはです」
「その為にはですね」
「はい、その為には信じることです」
信頼、その言葉が出された。
「義正様をです」
「あの方を」
「そうです。信じられることです」
また話す婆やだった。
「何処までも」
「それが。幸わせを手放さない為の」
「最初の一歩です」
そうであると。婆やはその人生経験から話していく。さらにだった。
「それからです」
「人を。あの方を信じること」
「二人でいるならばまずそれからです」
「信頼から」
「ですから。決してです」
「疑ってはならないのです」
信じることは即ちそれだとだ。婆やは言葉をいささか変えて述べた。
「宜しいでしょうか」
「何処までも。信じる」
「お嬢様はそれができますね」
「幸せにヒビを入れてはならない」
疑い、それはそのままそれになる。真理はそのこともわかった。
「そうですね」
「それはできますね」
「できるようになります」
これが今の彼女の言葉だった。
「何があろうとも」
「その御心です」
婆やは真理の今の、できるようになるという言葉に応えて笑顔で頷いた。その優しい笑顔で。
「そうであればです」
「私は幸せを手放さなくて済むのですね」
「そうです。ではお嬢様」
「はい」
「何処までも信じられて下さい」
優しい笑顔のままで。真理に話していく。
「そうされて下さい」
「わかりました」
真理も笑顔になって頷く。しかしだった。
部屋の前に来た。そこでだった。
不意に咳き込む。何度かだ。それを見てだ。婆やは彼女を心配して声をかけた。
「あの」
「大丈夫です」
こう婆やに返すのだった。
「何もありません」
「最近妙に咳が多いですが」
「それは私も気付いていますが」
「風邪でしょうか」
怪訝な顔でだ。真理に問うた。
「これは」
「風邪、ですか」
「風邪は万病の元です」
昔から言われていることをだ。婆やも言葉に出した。
「くれぐれも御気をつけを」
「そうですね。それでは」
「今はお休み下さい」
そうしろとだ。真理によく話す。
「御部屋に戻られましたし」
「では。部屋に入れば」
「ベッドの中に」
具体的にだ。そうするべきだというのだ。
「本当に」
「はい」
真理も頷いてだ。そのうえでだった。
己の部屋に戻ると婆やに手伝われベッドの中に入り休んだ。真理はまどろみに入りながら休息に入った。静かに瞼を閉じそのうえで眠るのだった。
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