「わかりません」
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たのは、他でもないショウキ本人であって。翼がないため空を飛べないという少女を、ここまで抱いて飛んできたことなどは一切の関係はなく――鍛え直している途中のこのアバターでは、抱えるのに途中で限界が来たのも関係なく、一息ついて観念しながら少女の方向を振り向いた。
「……なあ」
「どうしましたか?」
鈴の音のように綺麗な、人形のように無機質な、そんな言葉が浮かんでくるような声色で、黒髪の少女はこちらを見上げてきていた。その瞳はこちらをただ見据えていたが、やはりどんな感情を抱いているのか分からない――もしや、感情などないかのようなと伺わせてしまう深い瞳に、少しだけ言葉を失ってしまうものの。
「……お前は誰なんだ?」
「わかりません」
「へっ!?」
腹の探り合いなど望んでいないとばかりに、すぐさま確信を突いたショウキの言葉は、すげなく少女によって否定されてしまう。とりつく島もないというか、すぐ背後にいるリズ同様にすっとんきょうな声でもあげたくなるが、目を泳がせながらも諦めることはなく。
「何が目的なんだ?」
「わかりません」
「……名前は?」
「わかりません」
「リズ、お手上げだ」
「えぇ……」
のれんに腕押し、糠に釘。何も分からないと表情一つ変えてはくれない少女に、降参だとばかりにリズへバトンタッチする。とはいえリズも、まさかここまでだとは思っていなかったのか、胸を置くように腕ぐみしつつもどうしたものかと困ったような表情を浮かべていて。それでも気にはなるのか、リズは屈んで少女の目線に合わせてから、ゆっくりと笑顔で語りだした。
「ね、何か覚えてることはないの?」
「わかりません……何も、わからないんです」
……今までは何の感情も感じさせなかった少女だったが、今回の祈るように手を合わせる姿はどこか悲壮感を漂わせていた。自分でも自分が分からない恐怖か……悲しみかはともかくとして、人形のような外見も相まって、どこか守ってあげたくなる雰囲気を漂わせる。
「なら、自分が何か探すために、こうして色んなところを回ってるのか?」
「はい」
「なるほどねぇ……ま、それぐらいなら付き合ってもいいわよね。同じく自分探し中のショウキ?」
「……自分探し中かどうかはともかくとして。乗りかかった船だし」
少女の答えに納得したように、立ち上がりながらニコリと笑うリズに振られた言葉は半ば否定すると。あまりショウキの返答がお気に召さなかったらしいリズが、ジト目でこちらを見つめてきた後、自分の指をそっとショウキの口に置くと。
「ほらほら、乗りかかった船だし……だなんて見栄を張った言い方はしない、ってさっきも言ったでしょ?」
「……着いたぞ」
リズ
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