人狩りの夜 4
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から」
合成魔獣たちは野生の獣とはちがう。
たとえ相手との実力に雲泥の差があろうが、たとえ大きな手傷を負おうが、たとえ命を落とすことになろうが、主である魔術師の命令は絶対だ。
生存本能に従い逃走することはゆるされない。
そして秋芳とペルルノワール側には次々と召喚される魔獣相手に手心をくわえる余裕はなかった。
死なない程度に攻撃しても回復したら再度襲撃してくるだろう。新たな魔獣を相手にしているときに背後から襲われてはたまらない。
一体一体、完全に息の根を止めるしかなかった。
それが、もっとも安全で効率の良い対処法だったのだ。相手の数が不明な以上、余計なことをして体力魔力の浪費はできない。
マナ欠乏症にならないよう、可能なかぎり剣で応戦し、魔術の使用は極力控えて的確に行使する。
その戦いかたもあって秋芳もペルルノワールも消耗は最小限に抑えられていた。
「合成魔獣を兵器利用するための研究開発は禁止、凍結されているわ。所持するにも国からの許可が必要で、愛玩用や魔戦武闘用に何匹か飼育している貴族や魔術師はいるけど、クェイド侯爵がこんなにも大量の魔獣を用意しているなんて話は初耳よ。あきらかに無許可ね」
「罪を問うことができそうか」
「ええ、人民の誘拐、暴行、虐殺にくわえて合成魔獣の不法所持。たとえ大貴族とはいえ言い逃れはできないわ」
「そうか。……その合成魔獣だが、これで打ち止めかな?」
新たな魔獣が召喚されない。
たおして一分もしないうちに呼び出されていた魔獣たちが呼び出されない。
なんの反応もない魔方陣の代わりに、正面の壁に掛けられたクェイド侯爵の肖像から音声が流れた。
「よくもやってくれたなネズミども。おまえたちが殺したキメラは一番安いものでも屋敷のひとつふたつ買えるだけの値打ちがあったのだぞ」
「無辜の民をかどわかし、虐殺する。非合法な合成魔獣を大量に所持する。帝国の法に従い、おとなしく縛につきなさい」
「ふんっ、ろくに税も納めぬ非市民など、どうあつかおうが大貴族である私の勝手だ」
「王家の領民に危害をくわえることは、王家の財産を傷つけるに等しい。貴族であっても許可なく殺害すれば法に背く行為よ」
「盗人風情が大貴族たるこの私に王家の法を説くとは、笑わせるな」
「この顔を見忘れましたか、クェイド」
ペルルノワールが顔の上半分を隠している仮面をはずす。
象牙細工のように整った鼻梁、長いまつ毛で縁取られた蒼氷色(アイス・ブルー)の瞳。
仮面の下には秋芳が想像したとおりの美しい少女の貌があった。
さらに夜闇のような黒髪が一変。黄金を溶かしたかのようなまばゆい金髪となる。
【セルフ・イリュージョン】の魔力が宿った仮面の力で金髪を黒髪に染めていたのだ。
「ひ、姫様
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