5話→高校と宇宙
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「もしもーし、タローちゃん聞こえる?」
「大丈夫だ。バッチリ聞こえるぜ」
真空の闇に包まれながら、耳元から聞こえる声に太郎はそう返した。
空を見上げれば、満点の星空。
足下を見ると、青い地球。
もう100回を越えて行っているせいか、ある程度慣れた形で、太郎は宇宙を漂っていた。
重力から解き放たれ、前後左右、上下すら常人では分からなくなる空間。
だが、シュミレーター時代も含め、四桁を越える宇宙遊泳経験を持つ太郎にとっては慣れたもの。
「で、今回は何処へ行こうか?」
「とりあえず、月にゴー!」
相変わらずの能天気な声を聞き取りながら、太郎は自らのISに己の意思をリンクさせる。
テストモデル、脳波リンクシステム。
言葉や操作を行わなくても、頭部パーツの特殊な受動器を介して己の意思を反映させるというシステム。
束が、宇宙空間にて活動する際に動き易くするために作ったシステムを、太郎はここしばらくの使用でものにしていた。
束の声を受信すると同時に、太郎の思考を頭部の脳波システムがトレース。
加速の指示を受けた太郎のISは、背中に移動用のカスタムウイング、と呼ばれるスラスターを顕現し、それに答える。
(とりあえず月までは時短できるな)
対して、太郎は現れた背中のスラスターに、更に操作を加える。
スラスターから出るエネルギー体をただ放出するのではなく、一度溜め込むことで、直線方向という限定はつくが、一時的に更なる加速を生み出す技術。
ここ数年で習得したISの応用技術。
身体能力に差のある千冬から逃げる時に編み出した、後に瞬時加速(イグニッション・ブースト)と呼ばれるそれを用いて、太郎は月の方向に向かって自身の体を打ち出した。
その直後に、体全体にかかる爆発的な加速が、吸い込まれるように月と太郎の距離を縮める。
大して時間もかけずに、その身は『月』まで移動していた。
「月に着いたぜ。束。今日はどうする?」
『そーだね、送ったポイントに『基地』のパーツを嵌めて!』
通信と共にバイザーに光点が灯る。
今回は、大して苦労なく帰れそうだ。
月面に基地を作りたい。
彼女のそのわがままに付き合い、作り始めたのは確か中学を卒業した直後か。
慣性を利用しながら徐々に加速していく体。
ある程度進むと、『それ』はやってきた。
砂嵐。いや、塊の岩も含まれたそれは、『土砂崩れ』か。
初めて食らった時に、不覚にも巻き込まれた上に、意識飛ばしたのも、今となっては良い思い出か。
いや、流石に当時は全身に怪我を負って、一部は痕が残る傷もつくなど大変ではあったんだよ。
珍しく焦った千冬が迎えに来るレベルだ
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