第67話『開戦』
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まるのだ。王都の時とは、また違う緊張感である。一体、魔王軍とはどんな奴らなのか──
「あの・・・」
「ん? 何だ?」
「俺達も闘うんですか? まともに戦えないのに…」
出鼻を挫いたのは二年生の一人だ。いや、彼らにとっては大問題か。何せ、武器を持たずに戦場に行こうとしているようなものだから。
しかし、その問いに対する終夜の答えは無慈悲なものだった。
「・・・もちろんだ。ついてこい」
「え、部長!?」
「ただし!」
終夜はそこで言葉を区切る。その表情は真剣そのもので、ふざけているとは到底思えない。すると不安気な二年生含む一同を彼は一瞥し、口を開いた。
「ただし、危ない時は逃げろ。俺らに構わなくていい。命を大事に、だ」
その時、晴登の心に電撃が走った。
どうして、そんなことを言い切れるのか。彼には命に関わる経験など無いはずなのに。それなのにどうして──そんなに堂々としていられるのか。
「尤も、俺らが指一本触れさせねぇけどな」ニッ
そうやって親指を立てる終夜を、晴登はただ尊敬の眼差しで見る他なかった。
*
一行は早々に支度を終え、イグニスの封印されている場所へと向かった。魔王軍が結月を生贄とするならば、先回りして阻止するのみ。戦闘は避けられないが、結月の救出が最優先である。
「それにしても、こんな山奥に在るなんてね…」
「へばってる暇ねぇぞ、辻」
「別にそうじゃないわよ。このくらい大したことないわ」
終夜と緋翼との会話でもわかる通り、イグニスの封印されている場所──婆や曰く"竜の祭壇"はこの山の奥に在るらしい。しかし山は鬱蒼と木が茂り、道というのも獣道のみ。登るのはそう容易くなかった。インドア派の晴登にとっては、中々苦である。
「…あれ、開けてきた」
だが、景色に変化が起こった。森が途絶え、目の前に学校のグラウンド程の草原が現れたのだ。空を見上げると、数多の星と共に紅い月が輝いている。不穏な風が晴登の頬を撫でた。
「まだまだ先じゃ。急ぐぞ!」
「はい・・・ん?」
先に進もうとした矢先、やけに辺りが静かなのに気づいた──いや、静かすぎる。晴登は嫌な予感がした。
その刹那だった。
「ふっ!」ジャキン
「カズマさん!?」
「全員構えろ! 敵襲だ!」
カズマが太刀を振るうと、両断された矢が晴登の足元に落ちる。
急いで辺りを見渡してみると、何ということだろうか。いつの間にか、前方からぞろぞろと何か大軍が押し寄せて来ていたのだ。その数にも驚かされたが、何よりも──
「骸骨…?!」
その大軍の正体
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