第67話『開戦』
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「生きてる時間が違いすぎるからのぅ。かれこれ、魔王軍と対峙するのは十回目になる」
「じゅっ…!?」
せいぜい二、三回程度かと思っていたが、ここでも婆やは予想を遥かに上回ってくる。澄ました顔の裏に、まさかそんな経験が有ったなんて。
「だったら、今まではどう立ち向かったんですか? 今回みたいに、自分勝手に異世界から人を召喚してたんですか?」
ここで、終夜は棘のある質問をした。どうやら先の一件で、婆やに対して嫌悪を示すようになってしまっている。
しかし婆やは臆することなく、その質問に丁寧に答えた。
「それは違う。今までは儂や他の村の者と闘っておった」
「じゃあ今回は何で?」
「もう…いないのじゃよ。奴らと渡り合える力を持った者が、儂以外に」
悔しそうな表情を浮かべる婆やに、さすがの終夜も何も言えなかった。
"いない"ということは、"この世にいない"ということだろう。つまり、魔王軍との戦闘は犠牲を伴う。婆やは一人、また一人と味方を失っていったのだ。その心情は到底測り知れるものではない。
「都合が良いのはわかっておる。本来なら、アンタらの世界を人質にもしたくなかった。でも・・・今回ばかりは儂らに力を貸してはくれまいか?」
今度は頭を下げて、婆やは助けを求めた。尤も、晴登は元より闘う覚悟である。それは他の者達も変わらないはずだ。ただ一人を除いて。
晴登達はその人物に視線を向ける。彼は立ち尽くしたまま何かを考えていたようだったが、徐に顔を上げると口を開いた。
「……わかりましたよ。俺も手伝います。ただし、今回で御免ですからね」
終夜のその言葉に、全員が安堵の表情を浮かべた。
*
「さて、あの少女を攫った理由についてじゃが、心当たりがある」
「何ですか?!」
「落ち着けよ三浦」
心当たりがあると聞いて黙っていられるものか。制止する終夜をよそに、晴登は話の続きを促す。
「奴らの目的じゃよ」
「えっと・・・イグニスの復活、でしたっけ?」
「うむ。実は復活には、"生贄"が必要なのじゃ」
「な…!?」
皆まで言わずとも、魔王軍が結月を攫った理由は理解できた。身内ならまだしも、そうではない人を巻き込むなどまさに非人道的である。魔王に人も何も無いだろうが。
「てことは時間の問題か…!」
「婆や、イグニスが封印されてるのは何処ですか?! 先回りしましょう!!」
「うむ、それが最善じゃろう。場所は・・・案内した方が早いか。儂も犠牲は出したくない。今すぐ出発するとしよう」
「「はい!」」
一行は身支度を始める。
いよいよ、魔王軍との闘いが始
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