第67話『開戦』
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「──っ」ドサッ
結月の首元に手刀を一発。その瞬間有無を言わさず、再び結月の意識は深い霧の中に沈んでいった。
*
「あの娘を攫った奴の正体・・・そりゃたぶん魔王軍の奴だ」
「どうして言い切れるんですか?」
作戦を練るために繁華街からの帰宅途中、カズマからそんな言葉が飛び出た。結月を攫った人物の正体がわかるならそれに越したことは無いが、理由は気になる。
「霧のこと覚えてるか? あの霧は魔力によって作られたものだ」
「それは思いましたけど、だから何です?」
「人が居なくなってたってことは、人避けの結界の一種だろう。しかも繁華街全域となると、かなり大掛かりだ」
「つまり、それができるのは魔王軍くらいだろう、ってことですね?」
「そういうこと。ま、正確には"幹部"かな」
カズマの辻褄の合う自論を聞いていると、不意に新しい単語が出てくる。尤も、晴登にとってはマンガでよく見かけるため、イメージは掴めた。要は"幹部"とは、魔王の次に偉い階級のことであろう。
「だったら、幹部はどうして結月を攫ったんですか?」
「そこはわかんねぇ。人質って訳じゃ無いだろうし。ただ幹部が直々に出てくる辺り、警戒はされてるんだろうが」
敵の行動が読めず、思考が滞る。理由が有ることは明白なのに、その理由が皆目見当もつかない。
「……考えても無駄そうだ。とりあえず、婆やに訊いてみっかな。魔王軍については、婆やの方がよく知ってるし」
「そうなんですか?」
「あぁ。何度が闘ったらしいからな」
「えぇ!?」
ここに来てまさかのカミングアウト。確かに、あの若々しい見た目で歳が三桁とかいう、マンガでしか居なそうな人物だから、何かしら秘密は有るだろうとは思っていたが。
「それに、俺だって・・・」
「?」
「……いや、何でもない。それより、急いで戻ろうか。少し走るぞ」
何かカズマが言いかけた気がしたが、誤魔化されたので言及しないでおく。晴登にとっては、結月を救うことの方が優先なのだから。
*
「・・・カズマの意見は合っとる。それは十中八九、"霧使いのミスト"じゃ」
「"霧使いのミスト"…?」
「魔王軍幹部の一人でな、その二つ名の通り霧を用いた魔術を使用する。アンタらが見たのは恐らく"隠密の霧"、対象と周囲の存在を乖離させる魔術じゃ。言わずもがな、上級魔術じゃよ」
「マジか…」ハァ
敵の能力の高さに、思わずため息をついた。二つ目の世界を作り出すだなんて、まるで"シュレディンガーの猫"を彷彿とさせる技である。
「それにしても、よく知ってますね?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ