ペルソナ3
1942話
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取る……などという事はなかった。
桐条に導かれるように店の中に入ると、予想外な事に……もしくは桐条グループの規模を考えれば当然なのかもしれないが、他に客の姿はない。
つまり、これは今回の一件で店を貸し切りにしたという事なのだろう。
銀座の一等地にある、ここまで大きい店を貸し切るというのは、今夜だけの為に相当の金が動いたのは間違いない。
いや、金だけではなく、今日この店を利用しようとした客に対しても色々と話を通す必要があった筈であり、そう考えれば金だけで済む筈がない。
もっとも、これは別に桐条グループがどれだけ金を持っているのかというのを、暗に俺に見せつける……といった意味もあるが、それ以上に桐条の父親の身の安全を守る為や、何より俺という存在と会っていた事を、出来るだけ隠そうという意味もあるのだろう。
……まぁ、ここが中華料理店である以上、料理を持って来る者が俺の姿を見れば、完全に隠し通せるという事もないだろうが。
「お待ちしてました、お嬢様。旦那様は既に奥の部屋でお待ちですので、そのままお通り下さい」
そう言い、こちらに頭を下げてきたのは……メイド? それも、いわゆるメイド喫茶とかにいるようなメイドではなく、本物のメイドだ。
なるほどな。
まさか、中華料理店でメイドが働いている……などという事はないだろう。
勿論そういう店であれば、メイドが働いている可能性もなくはない。
だが、ここは銀座なのだ。
そういう店である筈がない。
ましてや、俺の視線の先にいるメイドは40代、もしくは50代といったような熟練のメイドで、とてもではないがメイド喫茶とかそういう場所で人気のあるメイドではない。
そして何より……今このメイドは、桐条に向かってお嬢様と口にしたのだ。
その事が、このメイドがどのような人物なのかというのを示している。
なるほど。この店の中に誰も店員がいないのはそういう理由な訳だ。
確かにメイドが料理を運べば、桐条の父親と俺が会っても、それを知られるような事はない。
勿論、本当にその辺りの事情を知りたいと思えば、俺が服を着替えたあの店に連絡を……いや、あの店も結構な高級店だ。普通であれば、客の情報を外に漏らすような真似はしないだろう。
ましてや、俺はこのペルソナ世界でも有数の巨大財閥桐条グループの客なのだから、そのような真似をすれば桐条グループそのものを敵に回してしまう事になる。
となると、情報漏れの心配は基本的にしなくてもいい訳だ。
勿論いざという時の備えを怠る訳にはいかないが。
ともあれ、俺と桐条はメイドに案内されて、店の奥にある部屋に向かう。
恐らくVIP用の部屋なのだろう。
銀座にある高級店という事を考えれば、普段は一体どんな人物が使っている部屋なのや
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