暁 〜小説投稿サイト〜
儚き想い、されど永遠の想い
178部分:第十四話 忍び寄るもの四

[8]前話 [2]次話

第十四話 忍び寄るもの四

「幸せにね」
「それではその為にも」
「行くよ。真理さんをこの屋敷に御呼びするよ」
「白杜家の方をこの屋敷に」
「そして僕もあちらにお邪魔することになるね」
 白杜家の屋敷にだというのだ。真理と同じくだ。
「そうなるよ」
「この場合も二人で、ですね」
「そう、二人でね」
 まさにそうだと話すのだった。その話をしてだ。
 ここでようやく佐藤に顔を向けてだ。彼に問うのだった。
「それで、いいよね」
「はい」
 佐藤はその義正にだ。静かに答えたのだった。
 そのうえでだ。彼はこう述べたのだった。
「そうあるべきです」
「あるべきなんだね」
「旦那様はそれが正しいと思われていますね」
「一人でいるよりはね」
 やはりだ。二人だというのである。
「だからね。そうありたいよ」
「では答えはもう出ています」
「僕の今の考えは間違ってはいないね」
「何が正しく何が間違っているか」
 佐藤はこんな風にも話した。
「それは常に変わるものですが」
「変わる。常に」
「善悪も変わります。その都度」
 これはその通りだった。この世のあらゆるもので普遍なものなぞない、それは善悪とて同じでだ。正義も邪悪も位置を常に変えるものなのだ。
 そのことをわかっている佐藤だった。それで今こう主に話すのだった。
「そして旦那様のお考えもです」
「今は正しいね」
「はい、今はです」
 やはりだ。正しいというのである。
「そのまま安心されてです」
「前に進めばいいね」
「そうされて下さい」
 また主に述べた。
「是非共」
「わかったよ」
 義正は彼のその言葉に微笑んで頷いて述べた。
「それじゃあね」
「そういうことで」
「そうさせてもらうよ。しかし」
「しかし?」
「善悪は流転するだね」
 真理とのことをどうするか話してだ。それからだった。
「そうだね」
「はい、そうです」
「では今の僕達は」
「今の時代では正しいです」
「今の時代ではだね」
「かつては。許されないこともあったでしょう」
「ロミオとジュリエットだね」
 またこの話になった。あの劇の話だ。
「あの時代の伊太利亜だと」
「許されませんでした」
「けれど今の日本では」
「許されます」
 そうだとだ。佐藤は話した。
「もっと言えばあの頃の伊太利亜でもです」
「許されたのかな」
「おそらくは」
 そうだったというのである。

[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ