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儚き想い、されど永遠の想い
177部分:第十四話 忍び寄るもの三
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第十四話 忍び寄るもの三

「わし等はそれを待とう」
「焦ってはいけませんね」
「焦っては負けだ」
「負けですか」
「勝ち負けの話ではないが」
 だからだ。この場合に負ける相手はというとだ。親としての自分自身、それだというのだ。
 その話をして。また妻に話した。
「ここは親らしく落ち着いて待とう」
「それが一番ですね」
「うむ。子を待とう」
 こんな話をしてだ。二人が義正が自分達の前に来るのを待つのだった。
 その義正もだ。今だ。佐藤とそのことを話すのだった。
 彼はだ。砂浜にいた。そこから見える海を見ながら彼に話す。
 白い砂浜から見える海は何処までも青く澄んでいる。その青い海を見て。
 彼はだ。自分の横にいる佐藤に話すのだ。
「賽は投げてだ」
「そしてですね」
「私達は交際するところまでいった」
「はい、確かに」
 それはその通りだとだ。佐藤も話す。
 そして彼はだ。あらためて主にこう話した。
「ですが次はです」
「そうだね。父上と母上に」
「お話をしなければなりません」
「わかっているよ」
 それはだとだ。彼も答えた。
「それはね」
「それでは」
「うん。ただ」
「ただ?」
「僕一人で行くべきではない」 
 こうだ。彼は砂浜を見ながら述べた。
「ここは。やはり」
「あの方もですね」
「真理さんもだね」
 彼女の名前をだ。ここで出すのだった。
「彼女と一緒に」
「はい。旦那様御一人のことではありませんから」
「彼女とのことだからね」
「それで御一人で行かれてはどうにもなりません」
 そうだとだ。佐藤は己の主に話すのである。
「ですから大旦那様と奥様にはです」
「僕と彼女で向かうべきだね」
「是非共です」
「勇気がいるね」
 二人で行くのにはだ。それが必要だというのだ。
 それがどうしてなのかもだ。義正は話した。
「一人でなら気楽だけれど」
「ですがこの度は」
「二人でないといけない。一人とは何と気楽なのだろうね」
「一人は気楽ですか」
「うん、気楽だよ」
 まさにそうだというのだ。一人ならばだ。
「何かをされるのも言われるのも僕一人だからね」
「それでだね」
「そうだよ。一人だととても楽だよ」
 砂浜から海を、白い波も時折見える海を見続けて。彼は話していく。
「本当にね。ただね」
「ただ?」
「一人は。寂しいね」
 こうも言うのだった。ここで。
「とてもね。寂しいね」
「寂しいですか。一人は」
「気楽だけれど寂しいよ」
 一人ならばそうだとだ。義正は話すのだった。
「そして何かを得るにしてもね
「そうしてもやはりですね」
「気楽だけれど寂しいよ」
「寂しさはどうしても付き纏いますか」
「一人はね。だからね」

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