176部分:第十四話 忍び寄るもの二
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第十四話 忍び寄るもの二
「英吉利に信頼されるだけのものがだ。我が国にはあったのだ」
「あの大英帝国からの信頼だ」
「それがまずあってですか」
「第一だ。英吉利は我が国を信頼してくれた」
その要因の一つとして義和団事件があった。この事件において日本軍の将兵達は完璧な軍規軍律と精強さを見せた。それを見てだ。英吉利の外交官達は日本を信頼できる国と考えたのだ。
それからだとだ。この彼も話していくのだった。
「その信頼があったのだ」
「では義正も」
「あの娘もな」
同時にだ。真理のことも話した。
「伊上先生が信頼されるだけの人物なのだ」
「伊上先生は人を見られることについてもかなりの方ですが」
「その伊上先生に信頼されていたのだ」
「凄いことですね」
「あの若さでな。いや」
己の言葉を訂正してだ。妻に話すのだった。
「若さ故か」
「それ故ですか」
「その一途さも見られたのだ」
そうなったというのだ。伊上は二人のそうしたところも見たというのだ。
「先生はな」
「そしてなのですね」
「二人のその人物、とりわけ一途さを見られて二人に力を貸したのだ」
「だからこそですか」
「それであそこまでされたのだ」
二人をだ。全面的に助けたというのだ。
「そういうことだ」
「そうだったのですか」
「信頼に足る人物にこそ力を貸す」
そうした人物は何かというとだ。
父はだ。考える、深い人生経験に基く考えから話すのだった。
「それが君子だ」
「君子。儒学の」
「それだ。二人は君子だ」
「義正はそうなのですね」
「面白いことだと思わないか」
彼は笑みにさえなってだ。妻に話す。
「我が子がそこまでの人物になっているとはな」
「ついこの前まで。甘えん坊の子供だったというのに」
「大きくなったな」
「はい、成長しました」
母としてだ。微笑んでの言葉だった。
「気付かない間に」
「義愛も義智もだがな」
「そうですね。思えばあの子達も」
「気付かないうちに。立派な人物になっている」
「そして義正もまた」
「わし等はだ。その義正をだ」
どうするのか。そうした話にもなっていた。
「温かく見守ろう」
「親としてですね」
「それが親の務めだ」
まさにだ。それこそがだというのだ。
「だからそうしよう」
「では義正が私達の前に来たら」
「よしと言う」
それだけだと。言い切ったのだった。
「来ればな」
「絶対に来ますね」
「来ない筈がない」
そうだというのだ。
「親の前にな」
「こうした話だからこそですね」
「そして来ない義正でもない」
こうも妻に話す。
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