ペルソナ3
1941話
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アパートの前に停まった黒塗りの高級車は、あまりにも場違いだった。
桐条の父親と食事会をするその日、俺は学校が終わった後は友近と寄り道をするような真似はせず、アパートにある自分の部屋で待っていた。
桐条からアパートに迎えをやるとメールで連絡が来ていたからそうしたのだが……
いやまぁ、考えるまでもなく桐条グループというのは、このペルソナ世界でも有数の企業グループ、いわゆる財閥だ。
である以上、まさか迎えに来るのがその辺の軽自動車とか、そういう事はなくてもおかしくはない。
こういう胴体の長い黒塗りの高級車が来るというのは、予想してしかるべき事態ではあった。
……これが、それこそ駅前とかであれば、そんなに場違い感はないだろう。
だが、このアパートは外国人とかが住むような、そんなアパートなのだ。
それこそ、金を払えば不法入国者であっても部屋を貸す、そんな場所。
そのような場所に、黒塗りの高級車というのは……これ以上ない程の場違い感というか、ミスマッチというか。
「アルマー、その、待たせたか?」
そう言いながら車から降りてきたのは、桐条。
ただし、その服装はいつものような制服や影時間の時の戦装束とは違い、チャイナドレス。
中華料理店で食事をするのだから、間違ってはないのかもしれないが……太ももの半ばまで剥き出しになったスリットや、年齢不相応に大きな胸を強調しているチャイナドレスは、どちらかと言えば男にアピールするような服装に見えるのは……俺だけではない筈だ。
実際、アパートの前を通りかかった20代程の男も、そんな桐条の艶姿に目を奪われて電柱にぶつかりそうになっていたのだから。
普段は凜々しい桐条だったが、今の桐条は凜々しい中にも艶めかしい色気というものがある。
アパートの住人が部屋の外に出てくる様子がなかったのは、運が良かったな。
もしここでアパートの住人が出てきたりすれば、同じアパートに住んでいる俺が何者なのかという話になっただろう。
いや、それだけではなく……下手をすれば俺を金持ちだと判断して、部屋に忍び込んで来るような者すら出かねない。
勿論、このアパートに住む為には、荒垣が紹介してくれた爺さんの面接を受ける必要がある。
そうである以上、金を目当てに俺の部屋に忍び込むなんて真似はしないと思うが、何事も絶対というものはない。
中には、何かをとち狂って……とか、そういう風に思う奴がいないとも限らないのだ。
ともあれ、周囲にアパートから出てこちらを見ている者がいないのを確認すると、俺は桐条に若干の呆れを混ぜて口を開く。
「あのな、こういう場所にそんな高級車で来ると目立つだろ? これなら、それこそ駅前とかで待ち合わせをした方が、こっちとしても色々と助かったんだけどな」
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