蓮根で見通しの良い年に・1
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「はふぅ……」
ウィスキーの注がれたロックグラスを前に、愁いを含んだ女が一人。どうにも今夜のお客は、新年早々に深い悩みを抱えているらしい。
「どうしたどうした?新年早々に深〜い溜め息吐いて」
「最近、お肌の調子が悪くて……これじゃあ司令官を誘惑出来ないわ」
と言って頬に手を当てて悲しげに呟いた。
「何でお前は本人を目の前にしてそういう事をズケズケ言うかねぇ!?」
俺が苦笑いを浮かべてそう返すと、
「あら?私に誘惑されたら不都合でもあるのかしら?司令官」
「幾ら色気があるっつっても、見た目がなぁ……50手前のオッサンと、ギリギリ中学生に見える駆逐艦じゃあ援交通り越して犯罪だぞ?如月」
「そうねぇ、司令官が逮捕されるのはご遠慮願いたいわ♪」
そう言って目の前の小悪魔こと如月は、おかしそうにクスクスと笑った。
そもそも、艦娘は限り無く不老に近い存在であるという話は以前にもしたと思う。しかしそうなると、車の運転をはじめとして色々と不都合が出てきてしまう。主に見た目の方面で。なので日本では艦娘……正確にはクローンである第二世代型艦娘の登場からだが、いち早く法の議論が為されて、『艦娘の見た目の年齢+稼働年数=年齢』という特殊な年齢の決め方で、免許の交付等の諸々の手続きを強引に可能にしたという過去がある。……まぁ、艦種がデカくなればなるほど見た目も精神年齢も成熟して生まれて来たのだから何ら不都合は無いんだが。
そこで、ウチの鎮守府の話に戻る。ウチは歴史の長い鎮守府だ……稼働を始めて20数年の古参と言える。当然ながらそれだけ初期から活躍している艦娘も歳を重ねており、今目の前にいる如月だって見た目は12〜3歳くらいだが中身は30過ぎのオバチャ……成熟した女性だ。今、合法ロリとか危ない単語が頭をよぎった奴は後でケンペイ=サンの所に出頭するように。
話が逸れた。つまりは年齢的にはケッコンしたりそういう関係になっても何ら問題は無いんだが、流石に俺にも体面という物がある。同業者同士なら事情も解っているしアレなんだが、そういう事情を知らない人からすると見た目の危険性というのは重要な部分だ。この間のクリスマス前にもケッコンしたばかりだからと夕立と時雨に気を遣って、他の嫁艦達が街中デートをセッティングしてくれたのだが、その最中ずっと両サイドの駆逐艦2人に挟まれていた俺は周りの人達にヒソヒソされていた。挙げ句の果てには『プライベート用の指輪が欲しい』とジュエリーショップに立ち寄ったら、事情を知らない女の店員さんに危うく通報されかけた。その時はちゃんと説明して事なきを得たが、駆逐艦の中でも大人っぽく見える白露型の2人でさえコレだ。更に幼く見える睦月型では……結果は推して知るべしだろう。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ