巻ノ百二十 手切れその十
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「その場合は負けるか、しかしな」
「加藤殿に島津殿がです」
「密にとはいえあちらからも自ら申し出てこられましたし」
「それならば」
「敗れてもじゃ」
例えそうなってもというのだ。
「右大臣様のことはな」
「はい、薩摩に入られれば」
「後は大丈夫です」
「天下人ではあられませんが」
「お命は」
「ならばじゃ」
秀頼の命が助かるならというのだ。
「その様にな」
「していきましょうぞ」
「手を打っていき」
「そしてそのうえで」
「我等はですな」
「戦いましょう」
「まずは
「確かに茶々様は気掛かりじゃが」
それでもとだ、大野も言う。
「まずはじゃ」
「戦になるのならば」
「勝つことですな」
「まずは」
「それが大事ですな」
「そうじゃ、勝つ為に心を砕くぞ」
これからはじまる戦にというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「天下の浪人達を集め」
「そうしてですな」
「そのうえで」
「戦に入りな」
そうしてというのだ。
「まずは何としてもじゃ」
「勝つ様にしましょう」
「この度は」
「戦をするかにはな」
大野も覚悟を決めて言う。
「やはりな」
「はい、勝たねばなりませぬ」
「負ければ滅びるだけですから」
「何があろうとも」
「勝ちましょう」
「わしはこれより戦の采配を執る」
大野がというのだ。
「そして出来る限りな」
「茶々様にはですな」
「気遣いはさせぬ」
「そうしていきますな」
「そうしていこうぞ」
出来ぬとわかっていても茶々にいらぬ口出しをさせぬ様にするというのだ、そうしたことを話してだ。
大野は天下の浪人達の中で力のある者達に文を出していた、大坂の動きが本格化していたその時にだ。
ふとだ、幸村は九度山でこんなことを言った。夜の星の動きを見てだ。
「戦になるな」
「では幕府と豊臣家がですか」
「遂にですか」
「戦になりますか」
「そうなりますか」
「星が教えてくれた」
こう十勇士達に述べる。
「そうした動きじゃ」
「殿がそう言われるなら」
「間違いありませぬな」
「戦が起きますな」
「そうなりますな」
「必ずな、しかし一方にじゃ」
幸村は星の動きを見つつ険しい顔になりこうも言った。
「暗い星がある」
「暗い星ですか」
「そうした星がですか」
「その星はやけに大きくしかも真ん中にある」
その一方にというのだ。
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