第5章:幽世と魔導師
第142話「一般人」
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=椿side=
「……ふぅ」
火属性を宿した矢で倒した絡新婦を尻目に、私は門を閉じる。
「さて、このまま次に向かってもいいけど……」
戦闘をしていた場所から出れば、それなりに減ったとは言え、まだ存在する蜘蛛系の妖と、蜘蛛糸に塗れた街があった。
……さすがに、全部放置していく訳にはいかないわね。
「(警察が動いているはずだから、妖を倒しながら探しましょうか)」
いくら士郎達が動いていても、この状況下では情報の伝達も上手く行っていないだろう。特に、現代の文明に頼り切っている今となっては、それが封じられただけで混乱に陥るだろうし。
「(この辺りは逃げられていない人も妖も多かった。妖が多いのは門が近くにあったから当然だけど……多分、こっちまで救援が来れてないのね)」
何せ日本全土での事件。人手が足りなくなるのは必然だろう。
私も、人手と実力がなければこの辺りの住人は見捨てると判断したと思う。
助けられない事を悔やむ人がいるけど……それでも“最善”の行動ではあるもの。
「……これも任務の内ね」
さすがに何とかできるのに放置はできない。
近付いて来ていた妖の残党を射って、行動を開始する。
……と言っても、私がする手助けは妖の排除だけ。
蜘蛛糸は……警察とかに任せましょ。
「………ん、気配はなくなったわね」
それから少しして、周囲から妖の気配が感じなくなった。
これなら例え妖が残ってても警察だけで対処できるでしょう。
「(じゃあ、人がいそうな場所へ行きましょうか。警察とかもそこにいるでしょうし)」
民間人は大体が大きな店などに避難しているはず。
そして、警察もそこを拠点に活動しているはずだ。
だから、人の気配を探ってそちらへ行けば、会えるはず。
「(……それにしても…)」
殲滅した場所から離れたためか、まだ妖の残党がいる。
その残党を道すがら倒しつつ、私は思考を巡らす。
「(……江戸の時は、ここまでの惨状にはならなかったはず。……皮肉なものね、平和になったからこそ、平和じゃなかった時より荒れてしまう)」
以前幽世の大門が開いていた時は、ここまでの惨状ではなかった。
確かに一部の地域では妖の被害が酷かったけど、それでも全体的に見れば今の方が危機に陥っている。……今の方が、文明は発達しているというのに。
「(まぁ、妖について一般人がほとんど知らないのも影響しているんだけどね)」
那美やすずかとか、“裏”に関係している人達ならば、文献などで知っている場合はある。……実際は二人共知らなかったのだけど。
けど、一般人は何も知らない。
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