暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン86 百鬼の疾風と虚無の仮面
[3/18]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
せん。ですが、せめて一声ぐらいは掛けさせてもらいます……ご武運を、先輩」
「葵ちゃん……」
「では、私はコロッセオの方に向かいますので。それと……これは、最初に約束しましたからね。先輩、ありがとうございました」

 すっと一礼し、部屋の外に出ていく葵ちゃん。最後のありがとうございました、というのは、元々デュエル前に言っていた僕が勝ったら3年分のお礼を言う、というあれだろう。言い出しっぺの僕ですら適当な軽口として忘れていたのに、そこをないがしろにしない辺り彼女の律義さがよくわかる。でもその背中を見送りながら、僕が噛みしめていたのはその前の発言だった。あの用心深い葵ちゃんがあえて今起きようとしていることに踏み込まず、それどころかあそこまで言い切ってくれるとは。普段の葵ちゃんがどんな性格なのかよく知っている僕だからこそ、今の発言の重みもわかる。今更ながらに、彼女が僕に寄せてくれていた信頼の強さを思い知らされた。

「姉上、どうせ近くにいるんでしょう?単独行動は厳禁ですからね、姉上でもいないよりはマシなのでついてきてください」
「わーい!葵ちゃんがお姉ちゃんのこと呼んでくれた〜っ!」
「うわ本当にいたんですか。いい加減私も言い飽きたんですがストーカーですよそれ、やっぱついてこないでください」
「んもー葵ちゃんったら、いつでも反抗期可愛いんだからー。あ、それと清明ちゃんも!お姉ちゃんこの間清明ちゃんが依頼してくれたあれなかなか楽しかったから、また助けが必要な時はいつでも呼んでくれちゃっていいからねー!」

 ……明菜さん、まーたこっち来てたのか。あの人は自由だなあ。さて、僕も急がないと。





 ラーイエロー。推薦や繰上りが入るオベリスクブルーを別格として、一般の入学生の中でもオシリスレッド相当以上の成績を持つものが割り当てられる寮……と、かつて触れ込まれていた場所だ。3年前に入学した遊城十代、遊野清明といった規格外の筆記はからきしだが実技だけはできる勢、そして2年前に筆記実技共に高水準だが本人の強い希望により例外として入寮を認められた早乙女レイなどの存在によりもはやその組み分けは完全に形骸化してしまい、オシリスレッドとの明確な差別点が建物そのものぐらいしかないことから、今となっては寮監の樺山教諭ともども「一番地味な場所」呼ばわりされるようになって久しい。
 そんなラーイエローの一室に、三沢大地の部屋はあった。かつて彼がツバインシュタイン教授に師事しアカデミアを離れた後も、樺山教諭の計らいにより卒業するまではという期限付きで新しい入居者を迎えることなく残されていたのだ。
 しかしかつては綺麗な物であったその部屋も、今となってはその面影もない。壁といわず床といわず窓といわず、ありとあらゆるスペース全てに耳なし芳一のごとくびっしり
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ