ターン86 百鬼の疾風と虚無の仮面
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『アカデミアの皆さん、校長の鮫島です。生徒の皆さん、そして教師の皆さんも卒業デュエル及びその関連作業に忙しいとは思いますが、一時デュエルを中断してください』
葵ちゃんとのティータイムを終えたところで、突然室内のスピーカーからかすかな環境音が鳴る。普段は授業も何もあったもんじゃないこの元教室のスピーカーが動いたということは、恐らく全校に向けてあらゆる場所のスピーカーを一斉にオンにしたのだろう。
ややあって鮫島校長の声が部屋中に、いやこの様子だと恐らくこの島中に響いた。このタイミングでの緊急放送、それもデュエルアカデミアでは大抵の事よりも優先されるはずのデュエルを中断させてまで話すこととなれば、それはもう目下一番の問題事であるダークネス関連しかありえない。
「デュエルの中断……?」
デュエルを中断、という言葉の異常性に、葵ちゃんがいぶかしげに呟く。それにしても三沢も、鮫島校長を利用しての全校放送とはうまい手を考えたものだ。確かにこの方法なら、校長自らがデュエルを中断させるという最初の掴みの強さも手伝ってこの島のどこにいようと話を聞き逃す心配は一切ない。少なくとも、僕なら絶対そんなことまで気が回らなかっただろう。スピーカーの方に視線を向けたままさっき出したクッキーをもう1枚つまもうとしたが、袋のあるはずの場所まで手を伸ばしても指先には何も触れない。どうなっているのかとテーブルの上に視線を戻すと、クッキーの袋を自分の手元に抱えて今日一番のジト目で探るような視線を向けてくる葵ちゃんと目が合った。
「……何?あとおやつ返して」
「私まだ2枚しか食べてないんですけど。それはそれとして先輩、何か知ってますね?」
「ほう。その根拠は?」
「いくつかありますが、一番わかりやすかったのは今の返しですね。もし本当に何も知らないのなら、先輩はもう少しわかりやすいリアクションをするはずですから」
「鎌かけたっての?」
わかりやすい誘導に引っかかったことに今更気づき、顔をしかめる。今のは僕の不注意も大きかったけど、本当に油断も隙もない。
「……まあ、いいや。それなりに真剣な話だから、葵ちゃんもしっかり聞いときなよ」
「どうやらそのようですね。そうさせていただきます」
珍しく言い返さない僕の態度から何かを感じ取ったのか、いつもの毒吐きや軽口も叩かず神妙に耳を澄ませる葵ちゃん。かたずをのんで見守る中、再びスピーカー越しに若干くぐもった鮫島校長の声が聞こえてきた。
『全校の皆さん、これよりアカデミアでは避難訓練を開始します。校舎で大規模な火災が発生した前提で、かつて本校で三幻魔事件が発生した際に建設されたコロッセオに生徒及び教師の皆さんには集合してもらいます。防火扉はすべて閉鎖しますので、各階の非常口より外に出てコロッセオに
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