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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -
人理修復後 ─スカサハ─
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──私に救われている?…ウィスが?──

──ああ、俺たちは出会うべくして出会ったのだと俺は思う。──

──出会うべくして出会ったか…、ふふっ。そうか、そうか……。──

 スカサハは心底嬉しそうに、微笑む。今この瞬間を享受するが如く。

──…。──

 見ればそっぽを向きながら頭を掻くウィスの姿が。

──ふふっ、照れているのか、ウィス?今のは捉え方によっては告白にも聞こえるからな。──

──…ああ、そうだよ。──

 照れたように頬を僅かに赤く染めるウィス。そんなウィスの頬を笑いながらつくスカサハ。

──ちょっ、止めろって。──

──ふふ、断る。ウィスを揶揄うことができるのは稀だからな。──

 2人の間を流れる甘ったるい空気。彼らはしばらくこの遣り取りを続けた。



──…スカサハは俺と出会ったことに後悔しているか?──

──愚問だな。私がそんなことを思うわけがないだろう。──

 即答するスカサハ。

──そうか。…なあ、スカサハ。──


──こんな俺を受け入れてくれて……──







───『ありがとう。』───







 ウィスは自分に微笑みながらお礼を述べてきた。

 スカサハはウィスのこの笑顔を生涯忘れることはないだろう。自分よりも長き悠久の時を生きているウィスのことだ。他の女にも不用心にこの笑顔を向けていることは想像に難くない。だが今この瞬間だけはこの笑顔は自分だけのものだ。誰にも渡しなどしない。







───私はお前が傍にいてくれればそれで良かったのに───

───ウィス、何故お前は私を置いて逝ってしまったんだ───







 彼女の問いに答える者はおらず、返ってくるは部屋の静寂のみ。

「……っ」

 そんな彼女の頬に流れ落ちるは──

「ああ……涙などとうの昔に枯れたものだと思っていたよ。」

 スカサハは一人膝を抱え、静かに嗚咽を漏らす。

 ウィスは常に影の国にいたわけではない。暫し外の世界に出掛けることはあった。ウィスの抱える事情を知っていたスカサハはウィスを止めるようなことはせずいつも影の国から旅立つウィスを見送っていた。

 ウィスは必ず自分の元へと帰ってくる。だから大丈夫だ。

 帰ってきたら沢山言葉を交わそう。彼の旅路を、物語を彼の隣で聞かせてもらおう。

 だから今回の人理修復の後もウィスは必ず自分の元へ帰ってくる───



───だが人理修復後に彼は自分の元へ戻って来なかった。ロマニとマシュ、そして此度の黒幕のゲーティアを救うべくウィスは消えたのだ。

 遺ったのはウィスがいつも
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