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悲劇で終わりの物語ではない - 凍結 -
人理修復後 ─スカサハ─
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 此処は無事人理修復を成し遂げたカルデア。

 ある者は日々迫る業務に精を出し、ある者は鍛錬に励んでいる。またある者は傷心し己の部屋の扉と共に心を閉ざしている。

 スカサハもその1人であり終局特異点からマスターたちが帰還後部屋に閉じこもっていた。

 何度かマスターやマシュたちが自身の身を案じ部屋を訪ねてきたが彼女は全て断っている。今の自分に彼らを相手にする余裕などないのだ。

 セタンタたちは空気を読んでいるのか今は黙って自分を見守っている。

 そんな彼女の部屋に光はなく、静寂が包み込んでいた。


「───。」

 今の彼女からは王者の風格など全く感じられず、普段の凛とした様子からは余りにもかけ離れている。それ程までに彼女にとってウィスの存在は大きかったのだ。

 スカサハの瞳はただ虚空しか映しておらず、心は此処にあらずの状態であった。

 そんな彼女は過去へと想いを馳せる。

 それは遥か過去の記憶。最も鮮明に、彼女の心に強く残っている記憶。

 変わらず自分は影の国にて門番をしていたが幸せを?み締めていた頃。

 何気ない日常、何気ない遣り取りに溢れていた頃。












──難儀なものだな、お互い。──

──ああ、全くだ。──

 ウィスとスカサハが座するは影の門。弟子であるセタンタの今日の修行を終えたスカサハはウィスを酒に誘っていた。

 彼らは肩が触れ合う程の距離で酒を酌み交わす。

──…ウィスは何時からその体質になったんだ?──

 躊躇気味にウィスへと尋ねるスカサハ。

──最初からだ。俺はこの世界に生を受けた瞬間からこういった体質だった。──

──最初から…。──

 感情の変化が乏しいスカサハが僅かに驚いた様子を見せる。

──ああ、最初からだ。スカサハのように神を殺した影響とかそういった理由じゃない。──

──…ウィスは何か思うことはないのか?万人が有する死を迎えることができないことに…。──

──…確かにそうだが、それ以上に俺には目的があるからな。──

──目的?──

──ああ、後の世に生まれる人々を少しでも良き人生へと導くことだ。──

──……。──

 黙って聞き入れるスカサハ。

──確かに永遠と生き続けることは辛く、困難な道だ。皆が死んでいくなか、生き続けるのは常に自分一人。世界はいつも残酷だ。だがそれ以上に俺はそんな残酷な世界で懸命に生きようとする人たちのことが好きなんだ。──

──…。──

──…。まあ、今はスカサハ、お前が俺の傍にいるからな。俺と同じ視点、時間を共有してくれるスカサハに出会うことができた。俺はそれで十分に救われているよ。─
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