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愛犬と占い師
愛犬と占い師
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のよ!」
自慢げに、そう言われた。
「それにしても値がハルデス」
溜め息混じりに、店員さんの情に訴えかけるように呟く、奥の手を使ってさり気なく小声で言った。私の演技と科白は、彼女には効果覿面だった。
「そんなにこの子を愛して下さるなら、店長と相談して参りますわ」
と言って、事務所に入った。十分程して事務所から出て来た彼女は、顔を真っ赤にし、まるで自分を私に売るかのような素振りをした。私の眼を見てウットリとした表情で、手を微かに震わせ、五十万円の札束を、時折フーと長い溜息を洩らしながら数えていた。
その後、血統書、動物病院紹介、狂犬病予防注射の受け方、飼育上の諸注意……などの説明を、懇切丁寧にタマワッタワ。その眼は恋人を見つめるようにトロンとし、さり気無く私の手を、時々さすって軽く握りながら……。
早速、セシルと書類をその店員さんからひったくるようにして、後ろを振り向く事なく一目散にマンションを目指した。赤のフェラーリをシャッター付のガレージに駐車させた。エレベーターが一階で止っていたから、慌てて乗り込み十四階の部屋に着いてほっと一息つき、キューバ産のハバナ葉を原料とした葉巻を悠然と燻らせた。リビングルームには、芳醇な甘い香りが充満し、正に得も言われぬ至福が私を包み込んだ。
ここは分譲マンションで、一括で支払ったので文字通り権利書は私がモッテルワ。二十九歳の若さで、何故、有り余る程お金を持っているのかと言えば、四億円程遺産相続したからナノ。
両親が、四年前交通事故で亡くなり、財産と保険金が天涯孤独の私の手に全て入った。
贅沢さえしなければ、遊んで一生暮らせるだけの金額だが、私は人相占いをして生計をタテテイルワ。
何故、時々女性の言葉が出るかと言うと、私は文字通り二重人格だからだ。姿はイケメンの男性だが、時々女性が心に現れ、外見に変化はないけれど、思考の全てが女性に変身シチャウノ。
解離性同一性障害は、この解離が繰り返し起こる事で、自我の同一性が損なわれる精神疾患だ。強い心的外傷を受けた場合、その心的外傷が自分とは違う「別の誰か」に起こった事だとして記憶、意識、知覚等と解離してしまう事らしい。

両親が亡くなって以来、自分が女性の思考になっている時間は、七対三の割合で女性である方が多いノヨ。
鈴蘭台行き電車に乗り、途中の山上駅からは目と鼻程近い有名な精神病院へ行った時、刑務所とほとんど変りない施設に入れられそうになり、逃げるようにして診察室を出た。
広大な敷地内で、新鮮な空気を胸一杯吸おうとウロウロしていると、鉄格子の入った窓から
「お兄さん、お兄さん」
と呼ぶから近付くと、妖艶な三十歳位の女性が、
「私が何故、ここにいるのか、お教えしましようか? 誰にも内緒にしてネ、貴方だけに特別にお教えするわ! 実は私は色狂いなのよ、ほ
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