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儚き想い、されど永遠の想い
160部分:第十三話 運命の告白その四

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第十三話 運命の告白その四

「華やかというよりは清らかだな」
「こうした舞踏会の場もあるのですか」
「はじめて見ました」
 三人にとってもだ。はじめてのことだった。
 息子達の話を聞いてだ。両親もだ。
 考える顔になってだ。それで話すのだった。
「結婚式の場に似ているな」
「そうですね」
 二人もこう捉えた。義正の兄達と同じことを感じていた。
 しかもだ。働いている者達の服もだ。それもだった。
「全てが白か」
「タキシードではなくですか」
「いや、白いタキシードだな」
 父が話した。
「それだな」
「白のですか」
「欧州ではあるのだ」
 そのだ。白のタキシードもだというのだ。
「だからそれ自体はいいのだが。しかし」
「しかし?」
「白のタキシードは舞踏会の場では普通は着ない」
 言うのはこのことだった。
「結婚式の場でだ」
「では今は」
「舞踏会ではないな」
 こう妻に話した。
「やはり。結婚式だ」
「そうですね。ここまで白ばかりですと」
「何を考えておられるのか」
 彼もだ。いぶかしむ顔になって言った。
「伊上先生のお考えがわからんな」
「あの方は生真面目な方ですが」
「生真面目というものではない」
 彼と付き合いがあるからこそだ。言えてわかることだった。
「厳格とも言うべきな」
「そこまでの方ですね」
「作法があればそれを厳守される方だ」
 そうした意味でだ。武士らしいと言えた。伊上は長州藩出身だ。その時は藩士の家だったのだ。それが縁あって山縣の部下となったのである。
「しかし今回はだ」
「妙なのですね」
「やはりこうしたことはない」
 彼はまた妻に言った。
「妙だな」
「そうなのですね」
「何かあるのだろうか」
 いぶかしみながら話す。
「この舞踏会は」
「あるとすれば何でしょうか」
「そこまではわからないがだ」
 しかしだ。それでもなのだった。
 彼は明らかに察していた。この舞踏会には何かがある。そう察していたのだ。
 そしてだ。当の伊上もだ。こう周りに話すのだった。
「これでいい」
「よいのですね」
「これで」
「そうだ。よくここまで舞台を整えてくれた」 
 微笑みさえ浮かべてだ。彼等に話す。
「これで一つの厄介な話が終わりだ」
「厄介な話がですか」
「終わりますか」
「そして幸せな話がはじまるのだ」
「幸せ!?」
「幸せといいうますと」
「これからわかる」
 そのだ。幸せのことはだというのだ。

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