16部分:第二話 離れない想いその一
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第二話 離れない想いその一
第二話 離れない想い
義正は理恵とはじめて会った。そのはじめて会った日はだ。
彼はそれからすぐに宴の場を後にした。宴が終わったからだ。
その日はそれで終わった。しかしだ。
次の日。彼は街の百貨店に出掛けた。八条百貨店、彼の家が経営する百貨店だ。そこに出掛けたのだ。
あの執事も一緒だ。彼が後ろから義正に言ってきた。
「昨日ですが」
「何かな」
二人は既に百貨店の中にいる。周りは人でごった返している。背広の者もいれば和服の者もいる。そこには老若男女が揃っている。
その中でだ。執事は彼に対してこう言ってきたのだ。
「何かあったのですか?」
「いや、別に」
すぐに否定する義正だった。
「何もないよ」
「そうでしょうか」
「うん、何もないよ」
彼はまた言った。
「気にしなくていいよ」
「どうもハンカチを拾われた時から」
「いや、あの時から別に何もね」
「ないですか」
「そう、何もないから」
暗い顔でだ。否定する彼だった。
「本当にね」
「だといいのですが」
「ただ。それにしても」
ここでだ。彼はこう言ったのだった。
「どうもでね。我が家とあの家は」
「白杜家ですね」
「あまり顔を会わせるべきでないのかもね」
こう話すのだった。
「好意が。純粋に好意とならない間柄だとしたら」
「?どういうことですか?」
執事は主の今の言葉にいぶかしむ顔になった。
「それは」
「いや、何でもないよ」
またこう言う義正だった。
「本当にね」
「左様ですか」
「何でもない。けれど」
「けれどとは」
「残念だよ。好意を受けてもそれを喜べないのは」
執事にだ。またこう話したのだった。
「その気持ちは。わかるかな」
「わかります」
執事はだ。静かに答えたのだった。
「それは」
「そうか、有り難う」
「世の中は。おそらく非常に複雑なのでしょう」
執事はだ。断定はしなかった。そうするには彼はまだ若かった。主である義正よりもまだ若いのだ。それならば断言はできないのだった。
「好意が。純粋に好意となるとは限らないのです」
「それが受け入れられないこともか」
「あります。時にはです」
「さらにだね」
「はい、悪意と取られることもあるでしょう」
こう話すのだった。
「残念なことに」
「好意でも悪意になってしまう」
「正反対になってしまうのです」
「嫌なものだね」
首を横に振ってだ。いたたまれない顔での言葉だった。
「それは」
「それもまた世間なのでしょう」
「そうなのだろうね。本当に」
溜息をついてだ。彼はまた述べた。
「実際にね」
「そうだと思います。ただ」
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