EX回:第43話(改2)<認められません>
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
しつつ、やはり振り返っていた。
「あの……そろそろ」
機長が着陸態勢に入ることを申し訳なさそうに告げる。
それを受けたように技術参謀は、大きくため息をついた。
「提督……いや司令」
私は日向の圧迫に耐えながら顔を上げる。
「はい」
「ちょっと、こっちに来い」
その言葉に私は日向を見た。だが、それでも彼女は手を離さなかった。
「……日向もう良いから離してやれ」
参謀の命令だが彼女は無言で首を左右に振っている。
圧迫されて感覚が鈍くなってきた手に何か水滴が落ちたような気がした。
(お前……)
泣いているのか。
私はふと、境港で彼女もろとも水路に落ちた時のことを思い出した。
技術参謀は再び、大きな声で急かす。
「早く来い!」
機体は降下中だ。
参謀は焦ったように言う。
「ばか者っ……時間がないぞ!」
仕方無く私は強引に技術参謀の方向へ歩き出す。
日向は、それでも離さなかったが手が解けて直ぐに解放された。
私が技術参謀の前まで来ると彼女は言った。
「本当にお前は、進歩がない。何というかだな! ……ったく」
「申し訳ありません!」
確実に呆れているな。
だが彼女は表情を緩める。
「まあ良い。そういう裏表なき真っ直ぐなバカさ加減もまた、この艦隊に不可欠なのだ」
「はぁ?」
それは、ほめ言葉なのか? ……いや逆か?
参謀は、ちょっと怖い顔になった。
「歯を食いしばれ!」
「ハッ!」
私が気合を入れると同時に鈍い音がした。
(痛ったア!)
目の前に火花が散った。思いっきりビンタを食らわされた。
危うく横飛びするところだった……いや揺れる機内では正直、少しよろめいた。
マジで倒れる寸前に祥高さんと日向が私の両脇を支えてくれた。
「あ、有り難う」
そうは言ったものの、かなり恥ずかしかった。
(でもやはり、いざという時に私を支えるのは、この二人なのだろう)
……そんな実感があった。
さすがの技術参謀も痛かったのだろう。自分の手をしきりに振って言った。
「痛ぅ……まあ良い。これでチャラだ」
「え?」
(もしかして軍法会議なしに無罪放免ですか?)
祥高さんと日向も顔を見合わせている。
「しっかり励め」
席に戻りつつ参謀は言った。
「バカ者め!」
それでも彼女は微笑んでいた。
「はっ」
思わず敬礼した。釣られるように祥高さんと日向も敬礼をした。
その光景は私の軍隊生活の中でも最も美しい敬礼の一つに成るだろうと実感した。
揺れる機体の操縦席から機長が叫ぶ。
「あと3分で着水します。全員、ご着席願います!」
「済まん機長!」
私たちは慌てて
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ