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提督はBarにいる・外伝
加賀の恐怖体験・3
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ほぼ人と見紛う姿となったそのホ級は、巨大な金属製のアームを両腕に装着して砲撃を開始。その火力は軽巡とは比べ物にならなかった。重巡リ級の登場である。また、別の個体は捕食した艦娘が駆逐艦中心だった為か、リ級とは違う姿に変化した。姿はより人間らしくなったのは同様だが、身体から剥がれ落ちた金属パーツが組み変わり、さながら水上バイクのような物を産み出し、そこから魚雷を放つようになった。雷巡チ級と呼称される個体だ。そして何より私を驚かせたのは、数少ない虎の子だった空母を仕留め、捕食した個体だった。

 それまでの変体とは系統が違い、化け物の様な見た目はそのままに口から小型の艦載機のような物を発射して見せたのだ。軽空母ヌ級の登場である。以上の事から、深海棲艦は捕食した物からその特性を学び、身体を自己進化させるものと思われる。つまりは、艦娘がやられればやられる程、敵は強く、凶悪で、多種多様に進化して手に負えない存在となって行くだろう。私はこのレポートを提出した後、海軍を辞めようと思う。この世界には、絶望しかないと悟ってしまった。




「嘘よ、嘘よ。こんな、こんな……事って…………!」

 そこまでレポートを読んだ加賀は愕然としていた。深海棲艦は、人や艦娘を捕食する事で文字通り血肉として進化を遂げていた。

「う、おえっ……!」

 知りたくなかった。こんな残酷な現実。そして他に考えようもなかった。提督達の行動、この空間、そして手元にあるこのレポート。間違いなく、提督達はこのレポートに書かれている事を試そうとしている。その場に崩れ落ちて軽く嘔吐し、涙の溜まった目を提督達に向ける。提督は、ガラス状のドームの隙間からイ級に向けて『何か』を投げ込んでいた。まるで動物園の飼育員が動物に餌付けでもするかのように。イ級がそれを咀嚼しているのだろう、バキ……メキョ……グチャ……ズル……といった酷く生々しい音が室内に響く。そして、加賀が提督の持っているバケツに目をやると、そこから覗く『何か』の先には五本の先の分かれた細い突起があった。

 それが見えた瞬間、加賀はここから速やかに逃げなければ……見つかったら何をされるか分からないという事を確信した。それもそのはず、提督の投げ込んでいた何かとは紛れもなく人間の手足だったのだ。
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