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提督はBarにいる・外伝
加賀の恐怖体験・1
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、ガチャリと音を立ててその鍵を開けた。

「……誰もおらんじゃろうな?周りには」

「大丈夫です」

 この念の入れ様。明らかに他者に見られると不味い代物を隠しているのは明白だ。


『あそこって……書斎よね?やっぱりここには何かがあるの?』

 そう、あの呻き声が聞こえると噂が立っていた件の書斎である。

『……気になる……………』

 覗くだけ、ちょっとだけ覗くだけ。そう自分に言い聞かせて加賀はドアを僅かに開けて、中を覗き込んだ。

『……!3人が立ってるのって、あの一番奥の……』

 そう、呻き声が最も強く聞こえる一番奥の書棚の前に3人は立っていた。そこで提督が何らかの操作をしており、暫くするとカチリ、と何かが填まるような音がして、続いてズズズズズ……と重い物を引き摺るような音が響いて書棚が観音開きにズレる。

『棚が動いた……!?あんな仕掛け、聞いた事が…』

 一瞬で模様替えできる執務室等、秘密基地的なギミック満載のこの鎮守府だが、新しいギミックが追加されたりすれば所属艦全員に周知される。有事の際の緊急避難に使われたり、誤作動させて怪我をしない為にだが、書棚が動くなんて話は聞いた事が無い。

「……先導はお願いしますよ?まだ内部の構造に不慣れな物で」

「あぁ、任せろ」

 憲兵が申し訳なさそうに言った一言に、軽く返す提督。

『内部?構造?あの書棚の奥に何があるというの?』

 その時脳裏を過ったのは、瑞鶴が話していた噂話。

“大型の鎮守府の地下には、出来損ないの艦娘を極秘に処理する施設があってーー……”

 まさか、と頭を振ってその想像を否定しようとする加賀。しかし目の前の現実が、その噂の証明をしているような気がする。

“もし見てしまったらーー……消される、でしょうね”

 更に赤城達との会話が頭を過る。進むべきか、退くべきか。決断の早い加賀には珍しく、書斎のドアの前で右往左往する。やがて決心したように、加賀は書斎のドアのノブに手を掛けた。ここまで見てしまったら、もう気になって戻る気にはなれない。それに毒を喰らわば皿まで、という諺もある。

『それに……少し覗いて戻れば、大丈夫…………よね?』

 加賀の心の中にあったのは、普段の心優しい提督の姿。少しからかったり悪さをした所で、苦笑いを浮かべつつ注意で済ませてしまうあの優しい提督ならば、尾行がバレたとしても許してくれるハズ。そう考えたのだ。

 書斎の真鍮で出来たドアノブに手を掛ける。瑞鶴の話を今一度思い出してしまったせいか、それとも深夜独特の空気に飲まれたか、それだけで重苦しい雰囲気に陥る加賀。しかし今の加賀は恐怖よりも好奇心と真相を確かめなくては、という謎の使命感に苛まれて昂っていた。意を決し
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