151部分:第十二話 公の場でその九
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第十二話 公の場でその九
「その二人が結ばれなくてどうしますか」
「それがあるべき姿なのですね」
「そう思います。少なくとも我が国ではです」
「昔からそう考えられていましたか」
「障害があれば乗り越える」
強い言葉であった。
「そして結ばれるべきなのです」
「ですか。それでは」
「お嬢様もロミオとジュリエットよりもです」
「それよりもですね」
「はい、本朝です」
そちらだというのだ。
「歌舞伎であるべきなのです」
「毅然として前を向いてですか」
「そのうえで幸せを掴まれるべきなのです」
「そうあるべきですか」
「はい、そうあるべきです」
まさにその通りだとだ。婆やの口調は変わらない。
その話をしてだ。彼は話した。
「では」
「それでは」
「私もそうします」
真理は言い切った。確かにだ。
それを話してだ。彼女はだ。
立ち上がった。心はだ。
その立ち上がった心でだ。婆やを見てであった。
「八重垣姫になります」
「お嬢様」
婆やはこう言ってみせた真理にだ。優しい笑顔で話してきた。
「婆やはいつもお嬢様と一緒でしたね」
「そうですね。私が物心ついた時から」
「その時から。そして今も」
「今もですね」
「お嬢様の味方です」
こう言うのである。
「それは変わりませんから」
「そう言ってくれるのですね」
「言葉だけではありませんよ」
優しい声でだ。真理に言うのである。
「それはもう」
「そうですね。婆やは」
真理自身これまでの婆やとのことを思い出した。それは彼女が幼い頃からの記憶である。そのことを思い出して言うのであった。
「私に。何かあれば」
「私にとってお嬢様はです」
「私は?」
「こう申し上げては不遜でしょうが」
それでもだとだ。婆やはだ。真理にあえて話すのだった。
「私にとっては孫娘も同じです」
「孫ですか」
「私にも孫は多くいます」
子供にも恵まれだ。孫にもだというのだ。
「しかしそれだけではなくです」
「私もですか」
「お嬢様もおられます」
まさにだ。彼女もだというのだ。
「お嬢様は私にとってそれだけの方です」
「そうですか。私は」
「こう申し上げては僭越でしょうか」
「いえ」
そうではないとだ。真理は笑顔で婆やの言葉を否定して。
そのうえでだ。その言葉を受け入れたのだった。
「私にとっても婆やはです」
「私は」
「もう一人のお婆様です」
そうだというのだ。彼女にとってはそこまでの相手だというのだ。
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