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儚き想い、されど永遠の想い
149部分:第十二話 公の場でその七

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第十二話 公の場でその七

 しかしその咳について殆んど考えずにだ。真理はこんなことを話した。
「どうも最近時々です」
「むせられるのですか」
「それも急に」
「はい、時々ですが」
 そうだというのだ。
「そうなります」
「何かよくわかりませんが」
「御大事に」
 こう言う二人だった。
「まずは健康あってですしね」
「本当に何ごとも」
「そうですね」
 真理は二人の親切に頷いた。
「それでは」
「風邪はです」
「万病の元です」
 二人は今度はこの言葉を告げた。
「ですから今のうちにです」
「御養生を」
「そうですね。それではです」
 それを受けてだ。真理は話した。
「今日はよく休むことにします」
「はい、そうすることです」
「それがいいです」
 こう話すのだった。こうだ。
「では御身体をです」
「くれぐれも」
 こんな話をしたのだった。これが二人だった。
 そしてだ。その話をしてからだ。
 真理はだ。二人が帰ってから婆やにだ。こう話すのだった。
「あの、婆や」
「はい?」
「若しもね」
 こう前置きしてからだ。婆やに話すのである。
「私が結婚するとしたら」
「それはいいことですね」 
 真理の結婚と聞いてだ。婆やは笑顔で応えた。
「是非共です」
「結婚するべきですね」
「結婚は人生のはじまりです」
 こうだ。そのにこやかな笑顔で話すのだ。
「新しい人生のはじまりです」
「新しいですか」
「私も最近本を読むようになったのですが」
「本を?」
「はい、本をです」
 読むようになったというのだ。
「読むようになりました」
「そうですか」
「はい、そうです」
 それでだというのだ。真理はだ。
「まあ小説ですが」
「小説ですね」
「その本を読んでいて。武者小路実篤ですが」
「あっ、あの人ですか」
「この歳でと思いますが」
 己の年齢も話しはした。
「それでも。読んでみると面白いもので」
「それでなのですね」
「はい、あの作家の恋愛はいいものですね」
 武者小路の書く恋愛小説がだ。婆やのお気に入りになったというのだ。
「その中で。人は恋愛によってです」
「それによってですか」
「人は変わるものだということに気付きました」
「そうなのですね」
「はい、恋愛によってです」
 それによってだというのだ。

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