第二章 俺たちの、アニメだ
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アニメに合わせて何度も何度も聞いている、あの曲である。
同時に、画像が映る。
地面のアップから、くるり上回りで、坂の遥か向こうの海が見える風景と、澄み渡った青い空、映像が逆さになって山を、というカメラワーク。
足。
スカートの裾。
ぱたぱたと、誰かが走っている。
背中側から正面へ回り込むように、同時にカメラが軽く引いて、走るその全身が映った。
学校の制服を着た、ぼさぼさ赤毛の女子。
焦っているような表情や走り方から、遅刻しそうなのだろうな、と伺える。
石に躓いて、転んだ。
顔面強打の衝撃から、カラフルな無数の星が出て、そのうち一つにズームアップし、画面全体はオレンジ一色に。
タイトルが出そうなタイミングであるが、音楽が流れるのみであるのは、まだロゴどころか作品名も主人公名も決まっていないためであろう。
場面転換して、神社で巫女装束姿になっている赤毛の女子。
もやもや雲が出て、妄想シーンに。
大皿小皿に囲まれて、高級そうな料理を美味しそうに食べているところ。
海の中を人魚になって泳いでいるところ。
気球に乗って地球をぐるぐる回っているところ。
男の子のシルエットが映り、顔がぐーっと接近、
あとちょっと、
あとちょっとお、
というところで、
目が覚めた。
がっくり。
青い空。眼下に海の見える学校。
教室。
先生に怒られ、立たされ。
校庭。体育の授業。
駆けっこ。
ビリ。
跳び箱。
飛べずに衝突。
どんより落ち込む。
友達に、
囲まれて、
二人、三人、四人。
笑顔の花が咲いた。
幸せに、楽しさに、抑えきれずに走り出す。
石ころに蹴つまずいて、顔面強打。
画像も曲もフェードアウト。
真っ暗。
黒縁眼鏡光らせ、暗くなった画面をなおも見つめ続ける定夫。
彼の胸には、嵐が吹き荒れていた。
感動、という名の嵐が。
パイロット版の、さらにプロモーション用といった程度の、なおかつまだオープニングのみであるが、しかし、自分たちの実力を遥かに超えるようなクオリティのものを作ってしまったというのが紛う方なき事実。
激しい波のように内からガンガン突き上げるこの感動に、涙が出そうであった。
う、う、と隣ではトゲリンが既に泣いていた。
「せ、拙者のっ、拙者の作ったキャラが、動いているっ!」
そもそも絵が動くのがアニメであり、アニメというならば、既に彼らは無料ソフトのスパークを使って作っている。
しかしスパークでは、ソフトの性質上、どうしても止め絵のスライドがメインになってしまう。
ということを踏まえ
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