第二章 俺たちの、アニメだ
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生命の息吹を与えること。
まさか自分たちが、そのようなことに関わるとは思ってもいなかった。
果たして、どのような作品が出来上がることになるのだろうか。
わくわくと希望に胸を膨らませる定夫であった。
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それは、ミイラであった。
いや、生きてはいる。かろうじて。
ミイラといって過言でないほどに、げっそりとやつれて、肌もガサガサのカサカサの土気色になっていたのである。
土呂由紀彦、つまり八王子が。
ただでさえガリガリひょろひょろ体型であったのに、それがさらに体重半分ほどになってしまっていた。
骨と皮。
吹けば飛ぶような、とはよく耳にする表現であるが、実際に去年の台風では傘を握り締めたまま十メートル以上の距離を吹き飛ばされた彼である。
もしもいま、あの時ほどの強風が襲ったならば、太平洋を越えてアメリカまで行ってしまうのではないか。
もしくは飛騨山脈や日本海を越えて北朝鮮まで。
ここはおなじみ、山田定夫の部屋である。
集まったるもおなじみのメンバー、定夫にトゲリン、八王子だ。
出来上がった作品を一緒に視聴しよう、ということで集合したのだ。
ネットで共有しているデータをそれぞれの自宅で観るのではなく、みんなで一緒に、と。
なお完成データは、共有フォルダには入れておらず、八王子がわざわざディスクに焼いて持ってきた。
機密保持のためという名目だが、単に手軽気軽に済ませたくなかったというのが八王子の本心だろう。
なにせ、己の体重の半分を奪った作品なのだから。
彼のその、並々ならぬ思いは定夫にも理解出来る。
だがそれとは別に、果たしてどんな作品が出来上がってきたのか、不安でもあった。
アニメ作成ソフトが届いてすぐに見せてもらった、あの気色の悪いサンプル、「口髭女子のアフリカ呪術ダンス」のイメージが強く残っているからだ。
とはいえ、フリーのアニメ作成ソフトであるスパークを使って、ネット民を唸らせるような高クオリティの作品を作り上げた八王子である。きっと、そこそこどころか、もの凄いものを作ったのだろう。
定夫は、八王子から受け取ったディスクをプレーヤーにセットした。
「八王子、お前が再生ボタン押せよ」
「いやあ、なんか恥ずかしいよ」
「恥ずかしいというならば、描いた絵を動かされる拙者もでござるよ! しからば一緒に。では、各々方」
三人、汗ばむ手でリモコンを持ち、再生ボタンを押した。
テレビのスピーカーから、音楽が流れ出した。
楽曲提供を受け、ネットで依頼した女性歌手に歌ってもらい、スパークで作成したオープニング風
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