幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第二十一話:最期の願い
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れるまま、色んな世界を旅した」
ノリは涙を堪えながら言葉を紡ぐ。きっと彼女は今、皆で巡った世界を思い出しているのだろう。
「ボク達は、貴女に『生きる』ことを教わりました。生きる喜びを、貴女は教えてくれました」
タルケンの声は震えていた。それでも、この時だけはと涙を堪えているのが分かった。誰よりも真摯に、生きることを諦めていた彼らに声をかけ続けた恩人のために。
「貴女のお陰で、ボク達はボク達の人生を諦めないって思えたんだ」
その巨体を強張らせて、テッチはいつもの温和な顔をくしゃくしゃにしながら言い切る。自分たちを救ってくれたのは、貴女なのだと。
「ありがとう、ラン。俺たちが今生きているのは、貴女のお陰だ」
きっと、そのジュンの言葉がとどめとなったのだろう。ランの瞳から、涙が零れた。
震える肩を抱く。皆の思いの丈はランに伝えた。次は、彼女の番だ。
「私は、ずっと、生きていていいのかなっ、て、思ってたんです…」
それは彼女の独白だ。これまで己の裡に秘め続けてきた、誰も知らない彼女の苦しみ。
「何も、することができず、家族に迷惑ばかり、かけて…。ユウキを、向こうに一人に、してしまって…こ、こんな私が、生きていて、本当に、いいのかな、って」
誰も知らなかった。自分たちに生きる喜びを教えてくれた人が、心の底で誰よりも生きることに迷っていたなんて。
ああ、それはオレの罪でもあるのだろう。ただの興味本位から、SAOに囚われ、彼女たちの傍にいてやれなかった。だから、刻み込まなければならない。彼女の本当に気持ちを。
「でも…っ、私、誰かの助けに、なれてたんですね……私の、生きてた意味は、確かにあったんだ……!」
一度溢れ出した涙は止まらない。それでも彼女は笑った。顔をくしゃくしゃにして、幸せそうに。
そう、彼女は今まで心の奥底で『証』を求めていた。生きていてもいいという証、彼女の生を正当化するモノ。それが、いつも身近にあったことには気づかずに。
「スリーピング・ナイツは、姉ちゃんが生きてたっていう証だ」
ユウキの声に、全員が涙を拭う。これより先は、騎士としての誓いだ。命を救ってくれた、敬愛する団長に向けての誓いに、涙は不要。
「我らスリーピング・ナイツは、これからも続いていきます。姉ちゃんが生きてきた証を、失わせはしない」
ランの表情は驚きに染まり、やがて、柔らかな微笑みに代わった。
「これは、この場にいる全員の総意だよ。ここから先、リーダーはボクが引き継ぐ。いいかな、姉ちゃん?」
ランは頷き、そして、驚くべきことに自力で立ち上がってみせた。その時、彼女の足元が消えかかっているのに気づいた。もう、アバターを維持することすらできないのだ
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