幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第二十一話:最期の願い
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込めた業を、彼女に捧げる。
「――叢雲」
護神柳剣流剣術奥義。
それは紺野縺が編み出せた唯一の奥義。
力の全て、流れの全て、体の構造の全てから無駄を削ぎ落し放たれる一閃。光速ではなく、神速でもなく、全ての挙動を上回る「最速」の剣技。
――紅桔梗が、弾け散った。
† †
ずるり、とランの身体から力が抜けオレにもたれかかってくる。オレはそれを受け止めて、ゆっくりと地面へ跪いた。
「フフ…私の、負け、ですね……」
耳元で呟かれた声は、酷く弱々しかった。それだけで、彼女に残された時間はもうないのだと悟ってしまう。
だからこそオレは宣言しなくてはならない。君に勝ったのは、最強の英雄であると。
「ああ。オレの、勝ちだよ、ラン」
傍らの少女は、満足そうに笑った。
「ああ――楽しかった」
それはきっと、心の底から出た言葉なのだろう。先は長くないと分かっていても、彼女は生きることを諦めなかった。全力で、生きることを楽しんでいた。そして、自分と同じ境遇の人にも手を差し伸べた。悲しみを分かち合い、喜びを分かち合い、共に生きて行く。それが、彼女の目指したスリーピング・ナイツだ。彼らは常に、彼女の傍にいる。
「……ラン」
最初に声をかけたのは、ジュンだった。彼はその赤銅の瞳いっぱいに涙を浮かべて、それでも溢しはしないと唇を噛み締めていた。
「ジュン、それに、みんな…うん、見ての通り、もう、限界みたい」
それを否定する者は、誰もいなかった。否定など、できないのだ。
「でもね、私、後悔はない、です」
だってこんなにも、ランは満たされた顔をしている。
「みんなと、色んな場所を冒険して、いっぱい戦って、楽しかった、もの」
彼女は、ここで終わってもいい。否、終わりたいと願っているのだから。
「姉ちゃん」
ならば、伝えなければならないことがある。ユウキの声は、決意に溢れていた。
ユウキを先頭に、全員がランに向けて整列する。オレはランを支えながらゆっくりと座らせた。
「ううん、ボクらの団長。スリーピング・ナイツのリーダー、ラン」
スリーピング・ナイツの皆は一斉に片膝を付き、ランに向けて頭を垂れた。
「ユウキ…?」
「聞いてやってくれ、ラン」
戸惑うランに微笑み、彼らのほうを向かせる。最初に口を開いたのは、シウネーだった。
「セリーン・ガーデンで貴女が私達に声をかけてくれて、そしてスリーピング・ナイツは結成されました」
VRホスピス「セリーン・ガーデン」。そこでランは、『生きる』為に、スリーピング・ナイツを作ったのだという。
「それから、アタシ達は貴女に連れら
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