幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第二十一話:最期の願い
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っとだ。
「……すげえ」
目の前で繰り広げられる戦いがこの仮想世界最高峰であることは間違いない。命を燃やして、心をすり減らして戦っているが故に、この斬り合いは鬼気迫るものへと昇華する。
「……二人とも、笑ってる」
その先に待つのは悲劇でしかないということは、斬り合っている本人が一番理解しているのだろう。
だからこそ彼らは笑う。
最期の望みを叶えてくれた兄に向けて。
運命を定めてくれた義妹に向けて。
彼らは後先のことなど考えてはいない。そんな事をしていたら、大切な『今』が逃げてしまうことを知っているから。
信念を乗せてぶつけ合っているこの『今』こそが、何よりも尊い時間であることを知っているから。
「っ!」
都合九度目の衝突を経て、金色の斧剣は力尽きるように消えていった。途端に硬直する体。剣を振り切った姿勢のまま、紅桔梗色の翼が大きく広がるのを見た。
「まだ…っ!?」
神速の九連撃に勝るとも劣らぬ速度の連続刺突に加え、十を超える連撃。
劣化しているとはいえ、大英雄の絶技を上回ったそれは、まさに神業。
「お前は間違いなく強い。だが、」
反応速度、窮地での機転、勝ちを引き寄せる意思の強さ。目の前の少女はその全てを持っている。
いずれ兄ですら追い抜いてしまうかもしれない。だが、その「いずれ」が訪れる前に、彼女の命は尽きてしまう。
だから負ける訳にはいかない。
彼女が望んだのは英雄としてのレンとの戦いだ。自己嫌悪に苛まれ、無力感に蝕まれ、罪の意識に怯える紺野縺との戦いではない。
お前が夢見た英雄は、真実、最強であったと証明しなくてはならない。
だから――
「負けるつもりは、ない」
意識を一度切り離し、刹那に繋ぐ。
SAO時代、彼の生命線であったと言っても過言ではいスキルコネクト。光を失った剣に、輝きが蘇る。
「させませんッ!」
ランに驚きはなかった。当たり前だ。兄がこれくらいの事をできないはずがないと確信していたから。故に、彼女の十撃目は渾身の力と意思を以て放たれた。
「ぐっ…!」
レンですら見切ることのできない速度で放たれた刺突は、彼の左脇を刳り貫いた。
「鞘で!?」
だが逆に脇腹を抉られただけで済んだのは、左腰の鞘によるガードが紙一重の所で間に合ったからだった。ランの刺突が見えた訳ではない。ただ、極限状態にある彼の観察眼と加速化された思考は、彼女の腕の振りの角度、速度を計算し、なんとか直撃するのを避けたのだ。
「これで、終わりにしよう」
――ああ、勿体ない。
そう思ってしまった心を捻じ伏せる。
この一刀を、これまでの縺が積み上げてきた全てを
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