幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第二十一話:最期の願い
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を剣が宿し、あまつさえ翼すら象るその剣は、最早誰も見たことがない高みにあった。
アルヴヘイム・オンライン。
SAO事件を受けて、絶対安全と銘打たれて世に出た新たなVRMMORPG。その基本骨子はソードアート・オンラインそのもの。故にこの世界にも、あの鉄城の創造主たる茅場晶彦の理想、憧憬が根付いている。そう、人間の持つ勇気を、決意を、覚悟を愛する男の意思が。
負けたくないというランの思いが、システムの限界を超えた。
その美しい光景に、レンは眩しく目を細める。
(お前は、生きてるんだな)
ランは、『生きる』ことに執着していた。それは生命活動を意味しているのではなく、喜び、悲しみ、悔やみ、そんな感情を得ることこそが『生きる』ことだと定義した。だからこそ、彼女は現実と仮想世界を区別したがったのだろう。
レンは、あの世界にいる間に多くのものを失ってしまった。その時に同時に失ってしまっていたのだろう。彼を構成していた原初の思い、敗北を許さぬ心を。伸し掛かる絶望と無力感に押しつぶされそうになっていた。崩れ落ち行く鉄城でネロに導かれた時、己の罪を受け入れ、命を落とすことを許容してしまっていた。
だがそれは違う。確かに罪は受け入れる。だが藍子を前にして、『生きる』ことを諦めるなど言えるはずもない。もがき、苦しみ、苦しみ、それでも全てを認めて、受け入れて、贖う。それこそが紺野縺に課せられた運命。例え罪の重さに膝を屈しようとも前に進み続ける。
「――お前のおかげだ」
濃紺の剣を左手に持ち替える。頭上に振り上げ、左腕を右手で支える。
此れよりは模倣の模倣。真作には到底及ばぬ絶技のなり損ない。故にこそ、使い手の意思によって此れは真作を越え得る力を持つ。
剣に黄金の光が宿る。紅桔梗の翼とは比べ物にならない、ただ荒らしいだけの光の奔流。
ならば研ぎ澄ませ。イメージするは記憶にこびりついて離れないあの斧剣。重さは模倣不可能、だがその分、疾さは真作を上回る。
「偽」
空間すら砕く九連撃、その模倣。システムのアシストなしに、自らの脳髄に記録された動きの流れを読み取り、身体に投影する。
紅桔梗に気圧されていた脚が、地面を砕く勢いで一歩前に踏み出す。
「射殺す百頭」
レンの瞳に最早迷いはない。ただ目の前にある戦いの勝利をもぎ取ろうと、ただそれだけを狙い光灼瞳。
黄金と紅桔梗がただ一点に吸い込まれるように放たれ、周囲を凄まじい轟音が劈いた。
「うおっ…」
数十メートルも先から吹き荒れた暴風に、小柄なジュンが吹き飛ばされそうになる。剣を突き立てて転倒を防ぐも、彼らの剣が触れ合う度に先よりも強い風が吹き荒れるせいで、踏ん張るのがや
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