第3章 着鎧甲冑ドラッヘンファイヤーSTRONG
前編 重過ぎた鎧
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なた、さっき帰って来たばかりでしょ!」
「平和を守る警察官は忙しいのだ! んじゃ行ってきまーす」
「ちょっ、ちょっと待ちなさい!」
――そんな彼女の説教が始まれば、それだけで数時間は拘束される。経験則からその事態を危惧した龍誠は、白々しさに溢れた言葉を並べながら、交番を飛び出し自転車に跨った。あすかの説教に比べれば、夏の猛暑の方がマシなのだ。
やがて彼はあすかの制止を振り切り、先ほどとは桁違いの速さで走り去ってしまう。
「……もぅっ……!」
そんな彼の背を、あすかは膨れっ面で見送るのだった。
◇
――沙原あすかは、警察学校時代から美人と評判であり、同期の男子達からの注目を集めていた。いわばアイドルのような存在であり、龍誠も悪友達と一緒に、その美貌を眺めていたことがある。
だが、二人にこれといった接点はない。「優等生」と「劣等生」という対極の立場である上、男子と女子は基本的に距離を離されているため、直接会う機会もない。
だから正確には、この交番に配属されてからが初対面であった。――龍誠にとっては。
だが……あすかは違っていた。彼女は警察学校に入学する以前から、一煉寺龍誠という男を知っていたのである。
――着鎧甲冑を纏うレスキューヒーロー。その頂点に立ち、伝説として語られ教科書にも載せられている英雄「救済の超機龍」。
かつて彼に命を救われたことがある両親は、娘のあすかにもその話をよく聞かせていた。そんな中で育った彼女は、いつしか「救済の超機龍」に憧れ、彼のようになりたいと願うようになったのである。
それゆえ彼女は、中学時代にヒーローへの道に進むべく「ヒルフェン・アカデミー」の門を叩いたのだが……常軌を逸する倍率の中を勝ち抜けるほどの才覚は、なかった。
それでも人々の為に戦う道を諦めきれず、彼女は生身でもヒーローになれると信じて警察官を志した。そして、警察学校への入学を果たし――入校初日の朝、一煉寺龍誠と出会ったのである。
春風が吹き抜ける快晴の朝。晴れやかな思いを胸に家を出た矢先――あすかは、三人組のコンビニ強盗に出くわしたのである。強盗は金を手にしたまま、警察学校とは真逆の方向へ逃走してしまった。
警察官なら、何としても捕まえるべき。だが、追っていれば入校初日から遅刻してしまう。それにそもそも、学生の身分で、武装した強盗を捕まえられる保証もない。まして自分は……女なのだから。
そんな葛藤に揺れ、何も出来ず固まっていた――その時だった。
あすかと同様、現場に居合わせていた一煉寺龍誠が、弾かれたように駆け出していたのである。彼はあすかの傍らを通り過ぎると、入校書類が詰まった鞄を投げ捨て、犯人追跡にのみ尽力していた。
そ
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