暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第3章 着鎧甲冑ドラッヘンファイヤーSTRONG
前編 重過ぎた鎧
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の超強龍《ドラッヘンファイヤー・ストロング》」を取り扱う特集番組が放送されていた。
 その正体として知られている久水財閥の御曹司・久水渉(ひさみずわたる)が、大勢の女性ファンに手を振っている。

 一方、制服をだらしなく着崩し、胸元の黒いアンダーシャツを晒している若い警官は、アイスを咥えながらふらふらと自転車を漕ぎ出していた。
 艶やかな黒髪を靡かせる、しなやかで筋肉質な体躯を持つ美男子――なのだが、その勤務態度のだらしなさが、全てを帳消しにしている。

 だが、そんな彼は下町の住民にとっては顔馴染みであり、「今更」彼のだらしない姿に文句をつける者はいない。
 曲がり角で出くわした、ラーメン屋の店主もその一人だ。胸元をはだけた若い警官を見るなり、厳つくも愛嬌のある笑顔を浮かべた店主が、パトロール中の彼に声を掛けて来た。

「よぉ龍誠、今日も暑いなぁ」
「なぁ(りく)さん、まだ冷麺やってねぇの? もうオレ溶けそうなんですけどー」
「ウチは毎年八月からって決めてんの。ギリギリまで勿体つけるスタイルだからな」
「ちぇー……これで美味くなかったら食ブロで叩いてやる」
「言ってろ。今に満点書かせてやる」

 へらへらと笑いながら軽口を叩き合う二人の姿は、ここでは日常の一コマに過ぎない。パトロールを中断して市民と談笑する警官を咎める者など、ここには一人もいないのだ。

「そいつぁ楽しみだ。んじゃな」
「おう、寄り道も程々にしとけよ。おっぱい同僚がまだ怒り出すぞ」
「そういうこと言ってると、おたくの奥さんもキレちまうぞ」
「バカ言え、ウチの結花(ゆか)はそこらの貧乳とは違う、希少価値レベルなんだぜ」
「あっそ、結果ちっぱいじゃねーか」

 やがて警官はケラケラと笑いながら、再び自転車を漕ぎ出して行く。その背中に手を振る、店主の左脚には――鋼鉄の義足が装備されていた。

 ◇

 それから約一時間。まったりとしたペースで近隣のパトロールを終えた警官が、交番に帰って来た。肥満体の部長は相変わらず、机に足を乗せたままだらしなく団扇を扇いでいる。

「ふぃ〜、パトロール終わりましたよっと」
「おかり〜。龍誠、アイス買って来たかぁ?」
「ちゃんとあるっすよ、ホラ」
「おまっ、これコーヒー味じゃねぇか! 俺はチョコ味っつったぞ! なんでちょっと苦いの選んだんだよ、俺の血糖値なんて嫁さんでも気にしねえぞ!」
「チョコ味なら中坊のガキンチョ達が根こそぎ買って行きましたよ。むしろ近い味を探し出して来たオレの機転を褒めて欲しいんですけど?」
「あんのクソガキ共がー! どうせ今頃涼しい部屋でピコピコしてんだろ! こちとらエアコンもねぇ交番で何時間も何時間も何時間も……!」
「あんたいつの時代の人よ……もう二十一世紀も
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