第2章 着鎧甲冑ドラッヘンブシドー
前編 学級委員と不良
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――着鎧甲冑の技術を巡る争いは、絶えず繰り返されてきた。その製造を一手に請け負う救芽井エレクトロニクスが、創設される以前から。
着鎧甲冑初の量産型として大量生産され、世界中に配備された白の外骨格「救済の龍勇者」。そのスーツには、二種類のバリエーションが存在する。
人命救助という本来の役割を担う「R型」と、治安維持を目的とし最小限の装備を持つ「G型」の二つだ。
――このうち、軍事利用を迫る他の勢力への、ある種の牽制として造られた「G型」は、長年デリケートな問題として扱われてきた。
人間を遥かに超えた力。それが悪意ある者によって人間に使われれば、甚大なる被害を生んでしまう。創始者である救芽井甲侍郎が、何よりも危惧していたように。
それゆえ「G型」の資格者試験の厳しさは「R型」を超えたものとなり、スーツ自体の生産数も意図的に抑えられている。結果として、選りすぐられた一部の精鋭にしか扱えないスーツとして、「G型」はそのポジションを確立させていた。
そんな中、「第一世代型」であった「救済の龍勇者」が徐々に旧式になり始めようとしていた。「救済の超水龍」を始めとする「第二世代型」が台頭し始めたためである。
しかも「R型」の「第三世代型」である「救済の遮炎龍」までもが、すでにテスト運用を始めようとしていたのだ。
これを受け、「G型」も時代に合わせ進化させるべきであるという意見が、救芽井エレクトロニクス本社まで集まるようになっていた。
その展開を静観していた救芽井エレクトロニクスのスポンサー・久水財閥の現当主である久水茂は、聖フロリアヌス女学院で学園長を務めていた妹の久水梢を呼び寄せ、「第三世代型」の「G型」を設計するよう命令。
兄の指令のもと、新世代着鎧甲冑の「矛」となる鎧を造るべく動き出した久水梢は、そのテストヒーローとして――久水流の門下生である、二人の少年に白羽の矢を立てるのだった。
◇
「兄貴ぃ! 焼きそばパン買ってきやしたァ!」
「おう、ご苦労……ってクソバカがァ! これ学食のパンだろうが! オレが言ったのは近場のコンビニの限定パンだぞ! 『ずっきゅんはぁと☆ミニスカメイド』のコラボ商品だ、わかってんのかこのクサレ野郎がァァ!」
「ひ、ひぃいぃいすみませんッ! すぐ買い直して来ますぅうぅう!」
――二◯三六年、四月。
五野寺学園高校、通称「五野高」。
東京都内の数ある高校の一つである、この学び舎の端には、不良の溜まり場となっている小屋がある。
その悪の巣窟たる空間に君臨する
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