第2章 着鎧甲冑ドラッヘンブシドー
前編 学級委員と不良
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も万能。その上、綾田商事の令嬢でもある。
それだけのものを備えていて、話題にならないはずもなく――街を歩けば誰もが振り返ると有名な、まさに「学園のアイドル」としての名声を欲しいままにしていた。
さして詳しいわけでもない真田と首里でも、それくらいの基礎情報は耳にしていた。そんな有名人である彼女は今、憤りを露わに蛭浦を真っ向から睨み付けている。
当然ながら強気な姿勢の取り巻き達が進み出るのだが、蛭浦は部下達を片手で下がらせる。彼は舐め回すような目で、彼女の姿を下から上へと見つめていた。
「やぁ、千歳君。わざわざ君から出迎えに来てくれるとはね。ここに籍を移した甲斐があったよ」
「蛭浦……あんた、どこまで私に絡んで来たら気が済むのよ! 学校にまで乗り込んで来て、みんなまで怯えさせて……!」
「僕はただ、君に会いに来たに過ぎないよ。彼らが勝手に怯えているだけじゃかいか?」
「最っ低……!」
どうやら、蛭浦と千歳は以前から面識があるらしい。真田と首里は情報を手繰り寄せるべく、聞き耳を立てる。
「父さんと母さんを追い詰めて、こんなところにまで来て……! しつこい男は嫌われるって、女の扱いの常識まで知らないのね!」
「何の話か、よくわからないね。僕は父さんに、君に会えるよう場を儲けたいとお願いしただけさ。君のご両親がどうにかなったとして、僕に責任があると思う?」
「……そんなに私が欲しいの。金の力で何でも好きにして、誰も彼も言いなりにして……!」
「合意の上だよ? こいつらが、僕のそばにいるのは」
蛭浦は不敵に笑いながら、千歳の傍らへにじり寄る。その薄気味悪さに顔を顰めつつも、彼女は強く抵抗できないでいた。
「僕は蛭浦グループの跡継ぎとなる男だからね。いい男であることの証明には、ステータスが必要だ。『金』、『権力』……そして『女』。その要素を満たすには、君を伴侶に迎えるのが一番だと思ってね」
「……天坂のお嬢様にフラれたから、権力でねじ伏せられるように狙いを変えただけのクセに。何が一番よ、このクサレ童貞」
「――ッ!」
その発言が、涼しさを保っていた蛭浦の表情を一変させた。彼は激情のままに平手を上げ、千歳は殴られても屈しまいと気丈に睨み続ける。
暴力を前にしても怯まない彼女に、蛭浦は唇を噛み締めつつも――手を下ろした。
「……やめておこう。君の美しい顔に傷が付いては、僕の妻としての価値が下がる」
「……生憎ね。私は、自分でこれと決めた男にしかバージンはあげないって決めてるの」
「君から求めるようになるさ。すぐに、ね」
それが原因で、興を削がれたのか。蛭浦は声色に冷静さを取り戻すと、取り巻き達を引き連れて立ち去って行く。
彼の背中が見えなくなった時になり、ようやく彼女は安堵
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