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フルメタル・アクションヒーローズ
第2章 着鎧甲冑ドラッヘンブシドー
前編 学級委員と不良
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「もう行くぞ。こんなところで油を売っている暇はないんだ」
「ハッ!」

 そして首里から離れた彼らは、蛭浦に付き従い小屋を立ち去って行く。そうしてこの場に静寂が戻ると、彼らの殺気に当てられていた不良達は揃って胸を撫で下ろした。

「あ、危なかった……! なんで蛭浦グループの御曹司が、こんな普通の高校に……!」
「……」

 校庭の中央を我が物顔で闊歩する蛭浦。彼の取り巻きを避けるように、生徒達は怯えた顔つきで散り散りに離れている。
 蛭浦グループの勢力はこの近郊を完全に掌握しており、彼の権勢に与していない企業はほとんどないに等しい。下手に絡まれ、逆らえば一家離散もあり得るのだから当然だろう。

 そんな天上人を遠目に見遣る真田は、首里と視線を合わせると――以心伝心の如く、同時に小屋を出て裏手に回った。

「首里。蛭浦といえば最近、悪い噂をよく聞くグループだ」
「……ああ。権威にものを言わせて、あちこちで好き放題してるっていう……アレだろ。暴行、窃盗、何をしても金の力で揉み消し、か……」

 首里は迸るような殺気を込め、物陰から蛭浦の背後を睨む。その傍らで歩いている取り巻き達は、見えない鎖で繋がれているかのようだった。

「梢さんがオレ達をこの学園に寄越した理由……見えてきたな」
「財閥傘下の企業への自浄作用。それを兼ねた、新型のテスト――か。確かに、俺達には似合いの舞台かもな」

 怒りを抑え込むため、敢えて軽口を叩く真田。その眼差しは、凍てつくような冷たさを帯びて蛭浦の背中を貫いている。

「しかし、涼しい優等生顔して中身は獣かァ。世の真っ当な男子諸兄に申し訳が立たないとは思わないのかね、ああいう人面獣心の似非エリート様はよ」
「……だが、おかげで奴がこの五野高に来た理由もある程度は予想がつく。確か以前、ここには元アイドルの天坂結衣が通っていたそうだな」
「フェアリー・ユイユイだろ? 確か、その姉ちゃんに求婚して呆気なくフラれたらしいぜ、あいつ。よくストーカーにならなかったな」
「天坂総合病院は蛭浦グループより格上だからな。自分より弱い相手にしか、強くは出られないのさ」
「ペッ、ますますゲスな野郎だ……ん?」

 首里が唾を吐き捨てる瞬間。蛭浦の眼前に、ある一人の女子高生が立ちはだかった。その無謀に近しい行動に出ている彼女には、二人とも見覚えがある。

 ――新一年生、綾田千歳(あやたちとせ)十五歳。
 茶色がかった黒髪を腰まで伸ばし、括れた腰や豊満に飛び出た巨峰や臀部……さらには色白の肌とそれに見合う美貌までも兼ね備える、スタイル抜群の美少女。
 入学して間も無く学園中の話題をさらい、すでに五十人以上の男子から告白されてるという噂も流れている。

 学力テストも上位を保持し、スポーツ
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