第2章 着鎧甲冑ドラッヘンブシドー
前編 学級委員と不良
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ぇぞ真田ッ! 金の力に物言わせやがって!」
「ふっ。俺はお前と違い、常に大局を見て金を出している。特典付きブルーレイボックスの予約を見送ったのは、このコンビニ限定商品のための布石だったのだよ!」
「くそったれ……! オレは、オレは踊らされていたのか!? 『湯気と光に隠されたあそこも、ブルーレイで大公開!』の売り文句にッ!」
深夜アニメのグッズを巡る壮絶な舌戦。それが、学園を牛耳る番長と学級委員との間で繰り広げられていた。
会話の内容こそ下らないようなものだが、それを語る二人の熱意と殺気は、絶えず周囲を圧倒している。
「残念だったな。俺はこの限定商品に、己が青春を懸けている! なにせ一等は、あのあやなちゃん役の声優『CHITOSE』の直筆サイン入りマグカップなんだからなァァァ!」
「畜生お前ばっかり直筆サイン貰い過ぎだろゴルァァァ! こないだもサイン入りの抱き枕当てたばっかだろうがァァ!」
「金さえ出せば必ず買えるグッズより、金で運を引き寄せて初めて手が届くグッズ! それが俺のポリスィーだ!」
彼らを取り巻く誰もが、その会話に割り込めずにいた。――その時。
「さっきから何を囀っているのかな。社会の、ゴミ共が」
「……!」
真田以上に、端正に制服を着こなした少年が背後から現れた。その周囲には、多数の取り巻きが陣取っている。
その眼鏡をかけた色白の少年は、冷酷な眼差しで真田と首里を交互に見遣り、深くため息をついた。
「……こんな中流家庭の端くれしか集まっていない高校でも、この僕が在籍している学び舎には違いないんだ。これ以上イタズラに泥を塗るのは、やめてくれたまえ」
「……? 誰だテメェ、見ねぇツラだな」
「貴様、立場を弁えろ! 蛭浦蛮童様の御前だぞ!」
そんな彼に首里が食ってかかる瞬間。殺気立った表情で、取り巻き達が小屋に押し入ってきた。
首里としては、このまま流れで荒事に突入するのは一向に構わなかったのだが――取り巻きの口から出てきた名前に、思わず足を止めてしまう。
それは、端で名を聞いた真田も同様だった。
「都内で蛭浦と言えば……久水財閥傘下の、蛭浦グループの?」
「そうだ! この近郊のありとあらゆる企業全てを束ねる、蛭浦グループ会長の御子息様だぞ! 口を慎め下郎が!」
「……いつの時代の三下だ、テメェら」
「なに!」
真田の質問に、高らかに答える取り巻き達。その大仰かつ横柄な態度を目にした首里が、舌打ちと共に悪態をつく瞬間。取り巻き達は、一斉に彼を包囲した。
そんな彼らの粗暴な態度に、首里も「面白い」と言わんばかりに拳を鳴らす。だが当の蛭浦本人が手を振り、もう下がれと言外に伝えた途端、彼らはすごすごと引き下がってしまった。
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