後編 懐かしい香り
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自分達は、悲劇のまま永遠に別れてしまったが……あらゆる危機を乗り切ってきた彼らなら、そんな運命に引き裂かれることはないだろう。
そんな、自分には手の届かない境地だからか。彼らを見つめる剣一の眼は、何処と無く羨望の色を帯びていた。
「へぇい……お待ちぃ……」
「ありがとうございます。……ふふ。大丈夫ですよ、気を落とさないでください。僕はちゃんとわかっていますから」
「へへ、ありがとよ……ほんとお客様は神様だぜぇ……」
やがて明らかに憔悴した様子で、長身の少年は注文された品を運んでくる。そんな彼に穏やかに微笑みながら、剣一はテーブルに置かれた昼食に手を合わせた。
「……しかしあれだな。お客さん、いつもそれ頼んでるよな。好きなのか? 唐揚げ」
少しずつ気を取り直してきた少年は、不思議がるように自分が持ってきた唐揚げセットを見下ろしている。
一方。ラーメンの傍に添えられている、小皿に乗った唐揚げを見つめる剣一は……もう帰れないあの日々を懐かしむように、微笑を浮かべていた。
優しい記憶を呼び覚ます、香りを感じながら。
「ええ。好きなんですよ、唐揚げ」
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