第10話 あの日の悪夢を砕く盾
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も叶わず自分も死ぬ。これほど、命を冒涜する女が自分以外にいるだろうか。
(ごめんなさい……鳶口様。ごめんなさい……「救済の遮炎龍」さん。わたしは、もう消えるから……どうか、どうか他のみんなだけは……お願い……!)
美夕達はあの後、無事に逃げられたのだろうか。そう逡巡する真里は、許しを乞うように涙を零す。
他人の命を犠牲にしておきながら、自分の命すら活かせない。その無力さに涙する彼女は、せめてもの思いで、自分を貶めた者達すら含む「全て」の幸せを願うのだった。
だが。
「ダアッ!」
「……っ!?」
そんな甘い白昼夢を抱いたまま逝くことは、真紅のヒーローが許さなかった。
崩落した天井を気合いと共に突き破り、真里の前に姿を現した「救済の遮炎龍」。その手には、消火銃「インパルス」と特殊合金製の盾を一体化させた専用装備「盾型消火銃」が装着されていた。
あの一瞬で秘蔵の盾を転送した彼は、崩落してきた天井を防ぎ切っていたのである。
少女を苛む、悪夢のデジャヴを打ち破った彼はそのまま、何事もなかったように真里のそばへ歩み寄り、縄を引きちぎって行く。
そして、腰の抜けた彼女を抱きかかえ、囁くのだった。
「……もう、大丈夫だ」
「……ぁっ!」
それは、かつて幸人の父が殉職する瞬間に遺した言葉。だが、今この瞬間にそれを口にした彼は、まだ、生きている。
この瞬間。佐々波真里を蝕み続けていた鳶口纏衛のトラウマは。目の前を塞ぐ闇は。
その息子の手で、切り裂かれたのである。
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