第9話 暗雲を穿つ、赤き鎧
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ぉぉおぉっ!」
そして悪い夢を振り払うように、がむしゃらに木材を振りかぶる。だが、そんなもので玄蕃家の武道家を止められるはずもなかった。
「あっ……!」
あまりにも速く。あまりにも鮮やかな。上段回し蹴りが、木材を天高く舞い上げて行く。
その光景を見上げるしかない美夕は、絶望に打ちひしがれ、両膝をつき、死んだ魚のような目で、地面を見つめた。
まるで目に映る景色だけは、現実から背けようとするかのように。
「……」
恵はそんな彼女と、自分に怯える他の役員達に侮蔑の視線を送った後。そこから目の色を一転させ、親友達を案ずる眼差しで旧校舎を見上げた。
(才羽……ごめん、ごめんな。つらい思いばっかりさせて、最後まで迷惑かけて。これで最後でいいから……もう一度だけ。アタシの、大切な幼馴染を……救ってください)
その時の彼女自身は、気づいていなかったが。
この瞬間の玄蕃恵の貌は、紛れもない、恋する乙女のそれであった。
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