暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第9話 暗雲を穿つ、赤き鎧
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
結ぶことが精一杯だった。

 そんな彼女を、美夕達はさらに狂乱した笑みで嘲笑する。第三者が端から見れば、間違いなく狂っているようにしか見えない光景だが、この場にそれを指摘できる人間はいなかった。

 そのため。

 笑い転げるあまり、美夕が薪を取り落としていたことに。

 そこから、木造の旧校舎に炎が広がっていたことに。

 平静を欠いていた彼女達は、気づくことができなかった。

「えっ……」
「あっ」

 辺り一面が、黒煙に飲まれるまで。狂気を覚ますほどに、煙の臭いが強まるまで。

「……き、きゃあぁあぁっ! か、火事、火事ぃぃい!」
「だ、誰か消しなさいよ誰かぁ!」
「ば、ばれる、みんなばれるっ!」
「悪くない! 私、何も悪くないぃっ!」

 すでに教室内は煙に包まれ、あちこちから火の手が上がっていた。こうなってはもはや、誰にも隠し通すことはできない。
 そこから導き出される、自分達の末路。彼女達の誰もが、すでにそれを予感していながら、口にする者は一人もいなかった。

 やがて、彼女達は混乱する中で一つの結論を出す。それは。

「い、いやぁあぁ! パパぁ、ママぁあ! 助けてぇぇえ!」
「私悪くないの! 全部、全部庶民のせいなんだからぁあぁ!」

 ……逃走。

 彼女達は恥も外聞もなく、喚き散らしながら教室から走り去って行く。
 無論。そんな彼女達の中に、真里の縄を解こうという優しさを持つ者など一人もいない。

「ま……待って! 誰か、誰か縄を解いて! お願い、行かないで! 行かないでぇっ! いや、いやぁあぁああ!」

 火災に苛まれた過去の記憶が、少女をさらに追い詰める。再び彼女の下腹から、暖かい液が流れ出た。

 だが、もう。この場には、それを嗤う人間すらいなかった。

 ◇

「くそ、なんだってこんな……!」
「玄蕃様。ここは私に」
「ああ! ……済まねぇ、最後まで迷惑かける!」

 そして、今。

 旧校舎前に辿り着いた幸人と恵は、五階から噴き上がる炎に奇妙な視線を送っていた。突然あんなところから、なぜ……。

「いえ。――接触(コンタクト)!」

 だが、今はその疑問を解き明かしている場合ではない。幸人はマフラーを靡かせながら上着を脱ぎ捨て、隠された袈裟ベルトを露わにする。
 そして、腰から引き抜いたカードをバックルに装填し、カバーを閉じた。

『Armour Contact!!』

 電子音声と共に真紅のスーツが現れ、幸人の全身に張り付いて行く。さらにその各部を、黒と黄色のプロテクターが覆った。
 首に巻かれた白いマフラーが、ふわりと宙に舞う。

『Awaken!! Firefighter!!』

 そして、シークエ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ