第9話 暗雲を穿つ、赤き鎧
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結ぶことが精一杯だった。
そんな彼女を、美夕達はさらに狂乱した笑みで嘲笑する。第三者が端から見れば、間違いなく狂っているようにしか見えない光景だが、この場にそれを指摘できる人間はいなかった。
そのため。
笑い転げるあまり、美夕が薪を取り落としていたことに。
そこから、木造の旧校舎に炎が広がっていたことに。
平静を欠いていた彼女達は、気づくことができなかった。
「えっ……」
「あっ」
辺り一面が、黒煙に飲まれるまで。狂気を覚ますほどに、煙の臭いが強まるまで。
「……き、きゃあぁあぁっ! か、火事、火事ぃぃい!」
「だ、誰か消しなさいよ誰かぁ!」
「ば、ばれる、みんなばれるっ!」
「悪くない! 私、何も悪くないぃっ!」
すでに教室内は煙に包まれ、あちこちから火の手が上がっていた。こうなってはもはや、誰にも隠し通すことはできない。
そこから導き出される、自分達の末路。彼女達の誰もが、すでにそれを予感していながら、口にする者は一人もいなかった。
やがて、彼女達は混乱する中で一つの結論を出す。それは。
「い、いやぁあぁ! パパぁ、ママぁあ! 助けてぇぇえ!」
「私悪くないの! 全部、全部庶民のせいなんだからぁあぁ!」
……逃走。
彼女達は恥も外聞もなく、喚き散らしながら教室から走り去って行く。
無論。そんな彼女達の中に、真里の縄を解こうという優しさを持つ者など一人もいない。
「ま……待って! 誰か、誰か縄を解いて! お願い、行かないで! 行かないでぇっ! いや、いやぁあぁああ!」
火災に苛まれた過去の記憶が、少女をさらに追い詰める。再び彼女の下腹から、暖かい液が流れ出た。
だが、もう。この場には、それを嗤う人間すらいなかった。
◇
「くそ、なんだってこんな……!」
「玄蕃様。ここは私に」
「ああ! ……済まねぇ、最後まで迷惑かける!」
そして、今。
旧校舎前に辿り着いた幸人と恵は、五階から噴き上がる炎に奇妙な視線を送っていた。突然あんなところから、なぜ……。
「いえ。――接触!」
だが、今はその疑問を解き明かしている場合ではない。幸人はマフラーを靡かせながら上着を脱ぎ捨て、隠された袈裟ベルトを露わにする。
そして、腰から引き抜いたカードをバックルに装填し、カバーを閉じた。
『Armour Contact!!』
電子音声と共に真紅のスーツが現れ、幸人の全身に張り付いて行く。さらにその各部を、黒と黄色のプロテクターが覆った。
首に巻かれた白いマフラーが、ふわりと宙に舞う。
『Awaken!! Firefighter!!』
そして、シークエ
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