第7話 令嬢の謀略
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ており、自分の意思で近づく者はほとんどいない、と言われている。
「あ、あの……どうして、こんなところまで……」
「あまり人通りの多いところでするべき話じゃないから、よ。あなたの場合は特にね」
それは普通の少女として生まれ育ってきた真里にとっても同様だ。元々、どちらかといえば内気で大人しい性格の真里も、こういった「いかにもお化けが出そうな場所」は苦手なのである。
なのであまり周囲を観察することはできず、悠々と軋む床を歩く美夕について行くしかなかった。ただひと気のないところに行くだけだというのに、階段を上がって最上階の五階まで登っている違和感にも、気づかないまま。
「え、えっと、それはどういう……」
「今、生徒会ではあなたを保護する目的で、役員として迎え入れる話が上がっているの」
「えっ!?」
「本当よ。それに、それだけが理由じゃない。一般家庭から進学してきた、初めての生徒であるあなたを立てることで、あなたを妬む上級生達に楔を打つ目的もある」
「……!」
「自分達を差し置いて、生徒会に入り込むあなたをよく思わない連中はいるでしょうけど……植木鉢の犯人のような奴でも、さすがに生徒会を敵に回せる愚か者ではないはずよ。曲がりなりにも、この女学院の生徒であるなら、ね」
振り返り、自信満々な笑みで美夕はそう言い切る。確かに現状、真里を保護できる有力な勢力は生徒会しかない。ここの生徒であるなら生徒会の威光に真っ向から立ち向かう愚かさもわかるはず。
真里を生徒会の正式な役員として取り込んでしまえば、いくら真里を憎んでいる連中でも、迂闊な手出しは出来なくなる。万一、彼女に手を出せば、全校生徒の頂点に立つ生徒会長、文村琴海を敵に回すことになるのだから。
「そ、そんな……ごめんなさい、吾野先輩……。先輩だけじゃなく生徒会長や生徒会の皆さんにも、わたしのせいでたくさんご迷惑を……」
「いいのよ、私達で決めたことなんだから。……ま、あなたが正式な役員になる前から、こんな話が漏れたら、何が起こるかわかったものじゃないからね。ちょっと辛気臭い場所だけど、許してちょうだい」
「い、いえそんな……」
美夕の言い分は尤もだ。
恐らく植木鉢の犯人の動機は、真里への嫉妬であるが……たったそれだけの理由で、殺人未遂手前の凶行に走るほどの激情家だとすれば。生徒会に入る、などという話を知れば、どんな手段で真里を潰しに来るかわからない。
そうなる前に、真里を安全に保護できるポジションに置くためには、他者を排した上で当人と話し合う必要があるだろう。
美夕の言葉から確かな気遣いを感じた真里は、そんな頼れる先輩の背中に、ほのかな憧れさえ抱くようになっていた。
その裏側に潜む、狂喜の貌など知る由もなく。
「ま……話の概要と、
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